【2024年4月施行】ソーラーシェアリングの許可基準が法制化されます

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これまで農林水産省からの「通知」によって運用されてきたソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)を目的とする農地の一時転用が、令和6年4月1日施行の農地法施行規則の改正により、法的な根拠を持つものとなります。また、これに合わせて新たにガイドラインが制定・施行されます。

この背景には、発電事業ばかりを優先して、太陽光パネル下部での営農が適切に行われていない事例が目立つようになったことがあります。下部の農地での営農が適切に行われなければ、農地は荒廃し、発電事業と営農を両立させるというソーラーシェアリングの意義が失われてしまいます。

今回の法改正・ガイドラインの制定は、「発電事業さえできれば農業は何でもいい」という考え方で取り組む事業者を排除することによって、ソーラーシェアリングを本来あるべき姿に立ち返らせようという試みだといえます。今後は農業へのコミットメントがより重要になるものと思われます。

日本の農地面積は、宅地・工場への転用や荒廃により、一貫して減少し続けています。また、世界の食料事情は不安定化しています。「国民に対する食料の安定供給の確保」という農地法の目的を達成するためには、今ある農地を有効に活用していく必要があります。

第1種農地・農用地区域内農地(青地)での太陽光発電事業

ご存じのことと思いますが、第1種農地に通常の(野立ての)太陽光パネルを設置するための農地転用は、許可を受けることができません。また、青地に太陽光パネルを設置するためには、それが可能だとしても、時間をかけて農振除外の手続きを経なければなりません。

(青地は優良な農地として市町村が指定している農地ですので、農振除外をして青地から外した場合に、第1種農地である可能性が高いです。)

しかし、ソーラーシェアリングの場合、第1種農地でも許可を受けられることがありますし、青地の場合は農振除外の手続きを必要とされません。そのため、ソーラーシェアリングは、太陽光発電事業の候補地が第1種農地や青地である場合の「次善の策」として利用されている一面があると考えられます。

次の表は、農林水産省の資料「営農型太陽光発電設備設置状況等について(令和3年度末現在)」に掲載されている農地区分別のソーラーシェアリングの許可件数(令和3年度末までの累計)になります。

合計 4,165件 100%
農地区分 許可件数 割合
農用地区域内農地(青地) 3,120件 74.9%
甲種農地 12件 0.3%
第1種農地 779件 18.7%
第2種農地 196件 4.7%
第3種農地 58件 1.4%

ご覧いただければお分かりのとおり、ソーラーシェアリングの圧倒的多数は青地で実施されています。そして、甲種農地、第1種農地を含めれば9割を超える件数が、野立ての太陽光パネルが設置できない農地で実施されています。

また、ソーラーシェアリングの設備の設置者を見ると、発電事業者が設置したケースが66%、農業者や農地所有者が設置したケースが34%となっています。このことからも、ソーラーシェアリングが発電事業優先になりがちであることがうかがえます。

もっとも、下部の農地での営農に支障が出ているケース(営農者が原因となっている単収の減少)は全体の21%です。ですので、ほとんどの事業者は適切に下部の農地を維持管理できているということもいえます。

ソーラーシェアリングのための一時転用、許可基準を確認

ソーラーシェアリングを実施するためには、太陽光パネルの支柱の基礎部分について、農地法第4条または第5条に基づく許可(一時転用許可)を受けることが必要です。その許可を受けるためには、通常の農地転用の許可要件に加えて、以下のような基準を満たすことが必要です。

1.転用期間が次の表の区分に応じた期間内であり、下部の農地における営農の適切な継続を前提として太陽光パネルの支柱を立てるものであること

期間 区分
10年以内 担い手が、自分の所有する農地または借りている農地を利用する場合
担い手とは以下のア~エに該当するケースを指します
ア 効率的かつ安定的な農業経営をしている者
イ 認定農業者
ウ 認定新規就農者
エ 将来法人化して認定農業者となることが見込まれている集落
遊休農地を再生利用する場合
第2種農地または第3種農地を利用する場合
3年以内 上記以外の場合

2.ソーラーシェアリングの事業が終わった後に、支柱部分が農地として利用されることが確実であり、かつ申請する面積が必要最小限で適正と認められること

3.下部の農地における営農の適切な継続が確実と認められること

営農の適切な継続が確実だと認められるためには、以下のア~ウのすべてを充たす必要があります。

ア 下部の農地で栽培する農作物の単収(収穫量)が、同年の申請する農地が所在する市町村の平均的な単収と比較しておおむね2割以上減少しないこと(遊休農地を再生する場合を除きます)

※ 遊休農地を再生する場合には単収の8割を確保という要件は必要ではなく、「適正かつ効率的に利用されていること」で済みます。

イ 遊休農地を再生利用する場合、農地法第32条第1項で定義されている遊休農地に戻らないこと

ウ 下部の農地において生産された農作物の品質が著しく劣化するおそれがないこと

 4.農地転用許可権者への毎年の栽培実績及び収支の報告が適切に行われ、下部の農地における営農の状況が適確に確認できると認められること

5.太陽光パネルの角度、間隔からみて農作物の生育に適した日照量を保つことができると認められること

6.太陽光パネルの支柱の高さ、間隔からみて農作業に必要な農業機械を効率的に利用して営農するための空間が確保されていると認められること

支柱の高さについては、農業用機械の利用や農業者が立って農作業をすることが可能な高さとして、最低2m以上である必要があります。

ただし、農地に垂直に太陽光パネルを設置するものなど、構造上、支柱の高さが下部の農地の営農条件に影響しないことが明らかであり、パネルの設置間隔、規模、立地条件等からみて、当該農地の良好な営農条件が維持される場合には、支柱の高さが2mに達しなくても差し支えないとされています。

7.施設の位置からみて、太陽光パネルの周辺の農地の効率的な利用、農業用用排水施設の機能に支障を及ぼすおそれがないと認められること

特に農用地区域内農地(青地)においては、農業振興地域整備計画の達成に支障を及ぼすおそれがないよう、以下の事項に留意しなければなりません。

ア 農用地区域内における農用地の集団化、農作業の効率化その他土地の農業上の効率的かつ総合的な利用に支障を及ぼすおそれがないこと

イ 農業振興地域整備計画に位置づけられた土地改良事業の施行や農業経営の規模の拡大の施策の妨げとならないこと

8.地域農業経営基盤強化促進計画の区域内において事業を行う場合は、地域計画に係る協議の場において、合意を得た土地の区域内において行うものであること

地域住民との協議においては、農業委員会による情報提供、事業者からの説明がなされることになります。

9.支柱を含む営農型の太陽光パネルを撤去するのに必要な資力及び信用があると認められること

10.発電設備を電気事業者の電力系統に連系することを予定している場合には、申請者が連系に係る契約を電気事業者と締結する見込みがあること

11.申請事業者が法第51条の規定による原状回復等の措置を現に命じられていないこと(違反転用をしていないこと)

ソーラーシェアリングの許可基準は令和6年3月までは「通知」によるものであり、法的な根拠はありませんでした。そのため、現場で改善指導や是正指導に当たっている自治体からは、法制化や明確なガイドライン(=行政指導の方針)の制定が要請されていました。

ソーラーシェアリングのための一時転用、必要書類を確認

ソーラーシェアリングを目的とする農地の一時転用を申請するためには、申請書と通常の農地転用に必要な添付書類の他に以下の書類が必要となります。法改正とガイドラインの制定によって、準備すべき書類が増えていますのでご注意ください。

なお、通常の農地転用(宅地や駐車場など)の際に必要な添付書類については、農地転用の手続きで必要な添付書類について行政書士が解説 の記事で詳しく解説しています。ご参照いただければと思います。

1. 営農型太陽光発電設備その他営農型太陽光発電の実施に必要な設備に係る設計図

2. パネル下部の農地における栽培計画、収支の見込みその他の事項について記載した営農計画書

3. パネル下部の農地における営農への影響の見込み及びその根拠となる書類

ア 下部の農地で栽培する農作物が、申請地の市町村で既に栽培されている場合

次に掲げるいずれかの事項を記載した書類が必要です。

a 栽培する農作物について、申請する農地が所在する市町村の区域内における生産量及び品質に関するデータ(例えば、試験研究機関による調査結果など)

b  栽培する農作物について必要な知見を持つ者(例えば、普及指導員、試験研究機関、設備の製造業者など)の意見書

c 申請に先行して下部の農地において耕作の事業を行う者の栽培実績(申請する農地が所在する市町村の区域内において行われているものに限られます。)

イ 申請する市町村において栽培されていない農作物または生産に時間を要する農作物を栽培する場合

栽培する農作物について必要な知見を持つ者の意見書の他に、次に掲げるいずれかの事項を記載した書類が求められます。

a 申請者が自らまたは第三者に委託して、申請地の市町村の区域内で試験的に実施した栽培の実績

b 単位面積当たりの収穫量の根拠を含む栽培理由

4. 営農型太陽光発電設備を撤去するのに必要な費用を設置者が負担することを証する書面

5. 毎年、下部の農地において栽培する農作物に係る栽培実績書及び収支報告書を農地転用許可権者に提出することを誓約する旨を記載した書面

いわゆる「誓約書」ですが、法改正によって新たに添付が必要となる書類となりました。許可を受けた市町村農業委員会や都道府県知事に対して、毎年の栽培実績や経営状況を報告することを誓約することになります。

ソーラーシェアリングに参入しようとする事業者様へ

現在許可を受けているソーラーシェアリングにおいては、サカキ、みょうが、キノコ類など、太陽光パネルの設置により遮光率が高くなることを前提とした、暗い場所でも育つ農作物が多く栽培されています。

発電事業を優先しようとすれば、農地の上部になるべく多くのパネルを敷き詰めることが効率的です。しかし、あまりにも遮光率が高くなるとすれば、太陽光を発電施設と農作物との間でシェアするというソーラーシェアリングの趣旨に反するものとなってしまいます。

今回の法改正とガイドラインの制定は、ソーラーシェアリングに取り組もうとお考えの事業者様にとっては、参入障壁が高くなる内容となっています。また、現在一時転用を受けている事業者様も、一時転用を更新しようとするときに影響を受けます。

幸いなことに農林水産省では、栽培する農作物に何を選べばよいかなどを相談できる体制を整えています。そして私たち行政書士は、営農計画作成の場面においても、事業者と行政の相談窓口とをつなぐ役割を果たせるのではないかと考えます。

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