分家住宅・農家住宅を一般住宅に用途変更するための手続きを行政書士が解説

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市街化調整区域において建築された分家住宅は、都市計画法第34条第1項第12号に基づき、例外的に許可された建築物です。そして、その許可は、申請者の属性に注目してなされたものであり、属人的な性質をもっているといえます。

ですので、その許可の効力は、許可を受けた人の相続人には受け継がれますが、第三者に承継させることはできません。具体的にいえば、分家住宅を他人に売ったり貸したりすることは、居住者の属性が変わることになるため、できないことになります。

とはいえ、すべての分家住宅について、居住者の変更ができないとしたらそれは不便です。権利を引き継ぐ者がいなくなってしまえば、その住宅は空き家になってしまいます。不動産は有効に活用されなければなりません。

分家住宅をその許可を受けた者以外の者に居住させるためには、都市計画法第42条第1項または第43条1項に基づく用途変更の許可を受けることが必要です。この許可を受けることにより、分家住宅は一般住宅となり、誰でも住めるようになるということになります。

この記事では、分家住宅の性質について簡単に確認したうえで、一般住宅に用途変更するための要件と手続きについて解説しています。分家住宅を売りたい方、貸したい方は以下で解説する手続きを怠らないようご注意いただきたいと思います。

分家住宅とはいかなる住宅のことを指すのか

ところで、「分家」という古めかしい言葉は、「本家」との対照によって理解する必要があります。ですので、まずは「本家」について解説します。

「本家」とは、その区域が市街化調整区域に指定される以前から、その区域内に土地を所有し、継続的に生活を営んできた世帯のことをいいます。地域性を鑑みると、農家であるか、農家であった世帯が多いと考えられます。

また、福島県では昭和45年(1970年)に線引きが行われていますので、これより前にその土地を所有していることが必要です。線引きとは、都市計画区域を市街化区域と市街化調整区域に分けることを意味します。

これに対して「分家」とは、「本家」から独立して生活を営むようになった世帯のことです。典型的な例をいえば、農家の二男や三男、あるいは孫が結婚を機に独立するようなケースがこれに当たります。

そして、この「分家」世帯が建てる住宅を「分家住宅」と呼びますが、原則として住宅が建てられない市街化調整区域においても、例外的に建築が認められる建築物となります。ここには、長年その地域内で暮らしてきた方々の生活権を保障する意味合いがあります。

このように、分家住宅を建築し、その住宅に居住することができる方は限定されます。なぜなら、分家住宅建築のための開発許可が受けられるのは、「本家」から独立した世帯の方に限られるからです。

※なお、分家住宅の建築が可能となる要件の詳細については、市街化調整区域に分家住宅を建てるための手続きを行政書士が解説 の記事をお読みいただければと思います。

分家住宅・農家住宅から一般住宅への用途変更が認められるケースとは

さて、前置きが長くなりましたが、ここからは分家住宅の用途変更について、許可の要件と手続について解説します。多くの場合、許可が必要になるのは、売買や賃貸借をしようとするタイミングとなるでしょう。

福島県の場合、分家住宅を含む既存建築物(市街化調整区域において適法に建築され、現在も存在する建物)を一般住宅や賃貸住宅に用途変更する際の許可要件は、開発審査会基準第17号にて規定されています。

そして、この要件については、分家住宅から一般住宅への用途変更のみならず、農家住宅から一般住宅への用途変更についても適用されます。それでは許可要件について一緒に確認してみましょう。

居住の用に供する建築物については、農家住宅や分家住宅から一般専用住宅または賃貸住宅に用途変更する場合には、次の①または②及び③の事由が認められること

①相当期間適法に使用された後、やむを得ない理由により用途変更する場合

ここで示されている相当期間の使用とは、建築から原則として10年以上居住していることを意味します。また、その間に無許可で増改築などを行った場合には、適法に使用してきたとはみなされませんので注意が必要です。

また、相続によるものを除き、建物を使用する者が変わる場合、譲受人は住宅または住宅を建築できる土地を有していないなど、譲り受けるに相当な理由があることが必要とされています。ただし、県外からの二地域居住の場合はこの限りではありません。

それから、賃貸住宅に用途変更する場合にはさらに要件は厳しくなります。分家住宅を賃貸住宅に変更する場合には、建物の所有者の変更は、相続によるものを除き、原則として認められません。

②相当期間経過していない場合にあっては、社会通念上、当該建築物を従前の用途に供しないことにやむを得ない事情が認められ、用途変更を行う場合

この要件は分家住宅の建築・居住から10年経過していない場合の要件です。10年経過していない場合には、やむを得ない事情のハードルが①より上がることになります。福島県の開発審査会基準では、所有者の死亡、破産、抵当権の実行、遠方への転居が例示されています

③用途変更にあたって、建て替えまたは増改築を伴う場合の建築物の床面積は、下表の規模以内であること

従前 280㎡以内 280㎡超
変更後 280㎡以内 従前と同程度

※車庫については45㎡以内を基準とし、主たる建築物とのバランスにより個別に判断されます。また、その他の付属建築物(物置など)については、1つの用途につき30㎡以内であることが求められています。

分家住宅・農家住宅から一般住宅への用途変更、手続きに必要な書類

次に、分家住宅から一般住宅へ用途変更する際の申請に必要とされる書類について、福島県郡山市の例をご紹介します。ここに挙げられているすべての書類が必要なのか、あるいは不要なものがあるのかは、個別の案件によって判断されることになるでしょう。

申請者の要件を確認する書類

ここでいう「申請者」とは、分家住宅や農家住宅を取得しようとする者のことです。建て替えや増改築が行われれう場合には、建築主がこれに該当します。申請者(建築主)は原則として、宅地や住宅を所有していないことが必要です。

書類 備考
住民票(世帯全員分) 申請住宅に居住する予定の者全員分
名寄帳または資産のない証明書 住宅や住宅用地を所有していないことを証明すること

土地の要件を確認する書類

ここでいう「土地」とは、申請者が用途変更しようとする分家住宅・農家住宅の敷地を指します。

書類(図面) 備考
土地登記事項証明書 申請地の所在が確認できること
公図写し 申請地の形状が確認できること
求積図・境界確定図 敷地面積等が確認できること
現況平面図 接道、敷地、排水計画等の状況が確認できること
使用貸借承諾書 土地の所有者の同意を得られていること
位置図、区域図 申請地の位置及び周囲の状況が確認できること
現況写真及び撮影方向図 現況(建築物・敷地境界)及び周辺状況が確認できること

建築物の要件を確認する書類

ここでいう「建築物」とは、用途変更をしようとする分家住宅や農家住宅、あるいは建て替え後の住宅のことを指します。

書類(図面) 備考
自己用専用住宅の申立書 自己居住用のみに使用することを誓約すること
理由書 変更前の所有者が、やむを得ず建築物を手放す理由
用途変更が必要な理由
使用経過書 継続して適法に使用されたことが分かること
建築物の登記簿謄本 相当期間継続して使用されていたかを確認できること
建築確認済証及び検査済証の写し 同上
競売物件明細書等 適法に使用された期間が、おおむね10年に満たない場合のやむを得ない理由があること
建築物平面図、立面図、求積図 用途・規模・配置が確認できること
その他 許可権者が必要と認めたもの

分家住宅・農家住宅を一般住宅に用途変更したいとお考えの方へ

分家住宅も一般住宅も、居住用の建築物であることは同じですが、単に住む人の属性が変わるだけで用途変更が必要になります。一見要件をクリアすることは簡単に思えるかもしれませんが、それを証明する書類を揃えるのはなかなか大変です。

しかし、適切な手続きを踏まなければ、住宅の売買や賃貸借をすることはできませんので、やるしかありません。また、新たに測量や図面作成が必要となる場合もありますので、許可を受けるまでにはある程度の期間が必要であることは覚悟しておくべきでしょう。

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