農地の一時転用、許可の要件と手続きについて行政書士が解説

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農地に復元することを前提として、一定期間に限って、農地を農地以外のものにする行為を一時転用といいます。そして、このような一時的な農地転用であっても、農地法4条または5条に基づく手続き(届出または許可申請)が必要です。

農地の一時転用の具体的な事例としては、建設工事に伴う現場事務所や資材置き場、イベント開催期間中の臨時駐車場、砂利の採取などを目的とするもの、そして近年では営農型太陽光発電設備の設置を目的とするものがあげられます。

一時転用においては、農用地区域内農地(青地農地)での転用が認められるなど、農地転用の要件が緩和される一面もあります。しかし、許可を受けるためには、農地に復元することが確実であることを、申請書の中で役所に示すことが必要になります。

この記事では、農林水産省の通知や福島県の手引きを参考に、農地の一時転用が認められるための要件や手続きについて解説しています。皆様が迅速かつ適法に事業を進めていくための道しるべとなれば幸いです。

市街化区域内の農地での一時転用手続きについて解説

都市計画法に基づく市街化区域は、「すでに市街化を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」とされています。都市機能を集中させる区域といってもよいでしょう。

そのため、農地を他の用途として使うことに対する規制はかなり緩やかで、農地転用の手続きも、許可申請ではなく、事前の届出のみで済ませることが可能です。

市街化区域内の転用は、周囲の農地に悪影響を及ぼすことがなければ、届出は問題なく受理されることとなります。一時転用であっても、届出書において特別な記載を必要とすることはありません。

農地の一時転用が認められるための要件について解説

一方、市街化区域以外の区域では、農地転用の手続きは許可申請となります。立地基準と一般基準の要件をクリアしなければ、農地を他の用途に使うことはできません。一時転用の場合にも、同じような考え方になりますが、通常の農地転用よりも基準が緩やかになることがあります。

ただし、農地の一時転用には、特に留意すべき事項として、以下のような要件が挙げられています。これらの要件をすべて満たしていなければ、一時転用は許可されません。(福島県の場合)

転用期間は3年以内であること

一時転用の最長期間は3年間であり、それを越える場合には通常の農地転用と同じ扱いとなります。ただし、真にやむを得ない場合には、必要最小限度の期間延長が認められるという運用がされています。

甲種農地及び第1種農地の場合、①用地選定の任意性がないこと、または、②第1種農地における例外許可対象事業であること

①の用地選定の任意性がないというのは、他の土地(農地以外の土地または第2種農地・第3種農地)では、その転用事業ができない場合であることを示しています。例えば、イベントの臨時駐車場は会場と隣接していることが重要です。周辺に代替できる土地がなければ、甲種農地や第1種農地でもやむを得ないということになります。

ここで注目していただきたいのは、第2種農地では用地選定の任意性が問われないということです。通常の農地転用の許可申請では、第2種農地の場合でも、他の土地(農地以外の土地または第3種農地)では目的が達成できないことの証明が必要でした。この点は、一時転用の要件緩和の一例だと言えるでしょう。

②についてですが、第1種農地では農地転用の許可申請が不許可になるということが前提となります。その上で、例外的に許可できるという事業が、法令により示されています。その中のいずれかに該当する場合には、一時転用が許可されることになります。

例を挙げると文化財の調査などの「研究調査」や砂利の採取などの「土石その他の資源採取」がこれに当たります。これらのケースでは場所の選定に制限があるため、優良な農地でも一時転用が認められることになります。

農地の復元に関する計画が定められ、かつ、転用期間内にその計画に従って、確実に農地に復元されると認められること

一時転用での農地転用の許可申請を行う場合、事業計画書の中で、農地の復元の時期や復元の方法についての記載が求められます。この内容は、一時転用の申請の際に最も重要視されるものと思われます。

また、自治体によっては、上乗せで、他の添付書類が求められることがあります。例えば、福島市においては、「本体の事業に関する事業計画や契約関係を証する書類の写し」、「農地に復元するまでの工程表」の提出が必要とされています。

農地法5条の許可の場合、その設定または移転する権利が所有権以外の権利であること

この要件は、農地の一時転用はあたって、所有権の移転が生じてはならないというものです。農地に復元することを前提とした転用ですので、復元した後は所有者が再びその農地で農業を行うことが求められているのだと考えられます。

土地の所有権が事業を行う事業者に移転してしまうと、復元された農地をそのまま使い続けてしなうかもしれない……。この規定は、このようなリスクを避けるために設けられた規定なのかもしれません。

つまり、一時転用での転用事業は、農地を借りて行われるものに限られているということになります。地上権の設定も理論的には考えられますが、現実的ではないでしょう。

農業振興地域整備計画の達成に支障を及ぼさないと認められること

農地の一時転用は、農用地区域内農地(青地農地)においても許可されることがあります。通常の青地農地の転用は、農振除外の申出が容認されてからの手続きになりますが、一時転用の場合には、農振除外の手続きを省略することが可能です。

そのための要件としては、上記4つの要件に加えて、市町村の農業振興地域整備計画の達成に支障を及ぼさないことが必要とされています。

営農型太陽光発電設備の設置のための一時転用について解説

営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)とは、農地に支柱を立てて上部空間に太陽光パネルを設置し、太陽光を農業生産と発電とで共有する取り組みのことをいいます。簡単にいえば、太陽光パネルを地上2m以上の高さで設置し、パネルの下部で農業をおこなうという事業になります。

ところで、この事業を実施するためには、支柱の基礎部分についての一時転用が必要とされています。なぜ通常の農地転用ではなく、一時転用なのかといえば、太陽光パネルの下部で行われている営農に著しい支障がある場合、パネルの撤去が求められるからだと考えられます。

あくまでも営農の継続が前提となる事業であるため、太陽光パネルの設置に恒久的な許可を与えることはできないということでしょう。

しかし、営農型太陽光発電設備の設置のための一時転用には、転用期間を10年まで延長できるという緩和措置があります。(先に説明したとおり、農地の一時転用は、原則として3年以内です。)この緩和措置の適用対象となるには、次のいずれかの要件に該当する必要があります。

  • 認定農業者などの担い手が下部の農地で営農を行う場合
  • 荒廃農地を活用する場合
  • 第2種農地または第3種農地を活用する場合

営農型太陽光発電事業の実施にあたっては、支柱部分の一時転用の他にも、クリアしなければならない要件・手続きがたくさんあります。これらについては、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)における農地転用について行政書士が解説 の記事で詳細に解説しています。

農地の一時転用をお考えの方へ、行政書士からのメッセージ

農地を一時的に他の目的に使いたいとお考えの方の中には、「少しの期間だから手続きは必要ない」であるとか、「元に戻すのだから許可は不要だ」などと思われている方がいらっしゃるかもしれません。

しかし、一時的な転用であっても、適正な手続きを踏まないで行ってしまいますと違反転用となり、原状復帰の命令が出されたり、場合によっては刑事罰の対象となったりする可能性もあります。当然、農地を元通りに復元するという責任は負うことになっています。

事業者の皆様におかれましては、事前に役所と協議をするか、または農地転用の専門家である行政書士を活用するか、いずれかの方法によって、適法に事業を遂行していただきたいと願っています。

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