農地に物流施設をつくるための農地転用手続きを行政書士が解説

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福島県の行政書士、佐藤勇太です。

運送業の営業所や車庫、倉庫などの物流施設をつくるための農地転用の許可基準は、立地基準において、他の目的のための農地転用の許可基準よりも要件が緩和されています。原則として農地転用が許可されないとされている第1種農地であっても、例外的に転用が認められる場合があります。

運送業の営業所や車庫、倉庫などの物流施設は広い敷地を必要とし、そして交通の便が良い土地が立地条件になります。しかし、農地転用が許可されやすい市街地付近に、そのような広い土地(農地)を求めることは困難です。物流施設をつくる際の農地転用の例外措置は、このような事情によって設けられたものだと考えられます。

農地転用の立地基準(農地区分)について確認

物流施設をつくるための農地転用についての解説をする前に、農地区分について簡単に確認しておきましょう。日本の農地は以下のように区分され、「ランク付け」されています。そして、高いランクの農地は原則的に農地転用の許可がされないことになっています。

農用地区域内農地(青地) 申請できない

今後長期間にわたって生産性の高い農業が営まれることを目的として、市町村が指定している農地です。

「農業振興地域の整備に関する法律」を根拠とする点で、農地法を根拠とする他の農地区分とは異なります。農用地区域内農地の農地転用を申請するためには、これに先立って、農振除外の手続きをおこなわなければなりません。

甲種農地 原則、不許可

市街化調整区域内にある特に良好な営農条件を備える農地のことをいいます。

  • おおむね10ha以上のまとまりがあり、高性能農業機械での耕作が可能
  • 農業公共投資がされてから8年以内
第1種農地 原則、不許可
  • おおむね10ha以上の一団の農地
  • 土地改良事業により換地された農地等
  • 高生産性農地
第2種農地 「許可できない例」を除き、許可
代替できる第3種農地が見つからなければ、許可
  • 農業公共投資がされていない、比較的小集団の農地で、第3種農地ほどには周囲が市街化されていない農地
  • 「第3種農地に近接する区域」「市街化が見込まれる区域内」にある農地
第3種農地 原則、許可
  • 市街地の中、または市街化が著しい地域の農地
  • 道路や下水道その他の公共施設、鉄道の駅などの公益的施設が整っている地域の農地
  • 宅地化が進んでいる地域の農地

第1種農地とはどのような農地なのか、詳しく解説

それでは、物流施設をつくる際の農地転用の例外措置の対象となる、第1種農地とはどのような農地を指すのでしょうか。福島県の農地法関係事務処理の手引(最終改正:令和3年10月)をもとに詳しく解説します。

第1種農地とは、良好な営農条件を備えている農地で、次のいずれかに該当するものをいいます。該当しているかどうかの判断は、最終的には許可権者によってなされます。

1.おおむね10ha以上の規模の一団の農地

一団の農地とは、山林、宅地、河川、高速道路などの農業機械が横断できない土地に囲まれている、集団的に存在する(まとまっている)農地のことをいいます。

農業用道路、農業用用排水施設、防風林などが点在している場合であっても、実際に農業機械が容易に横断・迂回することができ、一体として利用することに支障がない場合には、一団の農地として取り扱われます。

傾斜、土壌の性質その他の自然的条件からみて、効率的な営農を行うことができず、一体として利用することに支障がある場合には、一団の農地として取り扱われません。

2. 農業公共投資が行われた農地

具体的にいえば、土地改良事業またはこれに準ずる事業で、次の①及び②の要件を充たす事業の受益地である農地(土地改良事業により換地された農地など)のことです。

①の要件・・・次のいずれかに該当する事業であること

  • 農業用用排水施設の新設または変更
  • 区画整理
  • 農地または採草放牧地の造成

②の要件・・・次のいずれかに該当する事業であること

  • 国または地方公共団体が行う事業
  • 国または地方公共団体が補助、助成する事業
  • 地方公共団体から資金の貸付けを受けて行う事業
  • 日本政策金融公庫から資金の貸付けを受けて行う事業

なお、過去に土地改良事業による換地が行われた農地であるかどうかは、土地の登記簿の履歴により確認することが可能です。

3.高生産性農地

傾斜、土壌の性質その他の自然的条件からみて、その近傍の標準的な農地を超える生産をあげると認められる農地のことをいいます。その農地が高生産性農地に該当するかどうかは、統計資料などにより客観的に判断されます。

福島県では、①農業災害補償法の基準収穫量(農業共済組合による証明)、②福島県農林水産統計年報、③市町村が独自に作成している資料などによって判断するとされています。

第1種農地でも農地転用が認められるケースとは?

さて、原則として農地転用が許可されない第1種農地ですが、例外として許可される場合があります。物流施設もこの例外の1つですが、その他には次のようなものが挙げられています。

  • 事業認定告示事業(土地収用法に基づく事業)
  • 一時転用
  • 地域の農業の振興に資する施設のための事業
  • 市街地に設置することが困難または不適当なもの
  • 特別な立地条件を必要とする事業の用に供する場合
  • 隣接する土地と一体として同一事業の目的に供する場合で、第1種農地の面積が3分の1以下の場合
  • 公共性の高い事業の用に供する場合
  • 地域整備法等の定めるところに従って行われる場合

このうち物流施設に関係するのは、「特別な立地条件を必要とする事業の用に供する場合」です。

農地転用が許可されやすい物流施設の立地要件

福島県の農地法関連許可事務処理の手引きによれば、「流通業務施設、休憩所、給油所その他これらに類する施設」で、次の2つの区域内に設置されるものについて、その施設をつくるための農地転用は、第1種農地でも許可できるとされています。

主要な道路の沿道 国道と都道府県道に限定され、市町村道は該当しません。
また、物流施設の引き込み道路のみが主要な道路に接している場合には、沿道に位置しているとはみなされません。
高速道路の出入口の周辺 出入口とは、料金所のことを指すのではなく、料金所への進入路の始点を指すものとされています。
物流施設が、料金所への進入路の始点を中心として半径300メートル以内に位置していることが必要です。

物流業務は特別な立地条件を必要とすると判断されており、それに関連する施設を一定の区域に作る際には、農地転用の許可基準が緩和されているといえます。

農地転用が許可されやすい物流施設とは?

農地転用の許可基準が緩和されている物流施設とは、①流通業務施設、②休憩所、③給油所、④その他これらに類する施設、の4つに分類されています。それぞれの施設が何を指しているのか、詳しく解説します。

流通業務施設とは

「流通業務施設」とは、流通市街地整備法第5号第1条第1号から5号までに掲げる流通業務施設、そして物流総合効率化法第2条第3号に掲げる「特定流通業務施設」のことをいいます。具体的には、次のような施設になります。

  • トラックターミナル、鉄道の貨物駅その他貨物の積卸しのための施設
  • 卸売市場
  • 倉庫、野積場(のづみば)、貯蔵槽、貯木場
  • 上屋、荷さばき場
  • 道路貨物運送業、貨物運送取扱業、信書送達業、倉庫業、卸売業の用に供する事務所または店舗
  • 「特定流通業務施設」(トラックターミナル、卸売市場、倉庫または上屋であって、高速自動車国道、鉄道の貨物駅、港湾、漁港、空港などの近くに立地し、物資の搬入及び搬出の円滑化を図るための設備や流通加工の用に供する設備を有するもの)

例えば、道路運送事業法に基づく一般貨物自動車運送業の事務所や、これに付帯する車庫については、原則的に農地転用ができないとされる第1種農地でも、転用の許可が受けられる可能性があります。

ただし、そこに建築される建築物の敷地面積によっては、都市計画法による別の規制がかかりますので確認が必要です。

休憩所、給油所とは

「休憩所」とは、自動車の運転者が休憩のために利用することができる施設であって、駐車場及びトイレを備え、休憩のための座席などを有する空間を当該施設の内部に備えているもののことをいいます。

施設の内部に休憩スペースがあることが要件ですので、駐車場とトイレがあるだけの施設は「休憩所」には該当しません。「給油所」とは言うまでもなくガソリンスタンドのことです。

これに類する施設とは

「これに類する施設」として例示されているのは、自動車修理工場と食堂です。周囲に休憩できるような施設がない場合には、コンビニエンスストアも該当するとされています。その場合には、駐車場、トイレ、休憩のための座席(イートインスペース)があることが条件です。

農地に物流施設をつくるために気をつけなければならないこと

農地に物流施設をつくるためには、農地法による土地の利用規制を解除する手続き(農地転用許可申請)が必要です。その手続きにおいては、他の目的の転用の場合よりも要件が緩和されており、第1種農地でも許可を受けられる場合があります。これは、ここまで解説してきたとおりです。

ただし、土地の利用に関する法規制は、農地法によるものだけではありません。代表的なのは、都市計画法による開発行為の規制です。農地が都市計画法上のどのエリアにあるかによって、開発許可が必要となる面積が以下のように定められています。

エリア 開発許可が必要となる面積
市街化区域 1,000㎡以上
市街化調整区域 面積に関わりなくすべて
非線引き都市計画区域 3,000㎡以上
都市計画区域外 10,000㎡以上

また、建物を建てる場合や運送業を営む場合には、接道や前面道路の幅員の確認も必要になります。これらは、建築基準法や車両制限令による規制になります。

土地の利用については、様々な法令・条例による規制が行われており、1つの事業を遂行するためには、その規制を1つひとつ解除していく手続きを必要とします。見落としのないよう十分にお気をつけいただきたいと思います。

※ 物流施設をつくるための農地転用、ご相談をご希望の方【業務案内】農地を転用して物流施設をつくりたいとお考えの方へ をご覧ください。

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