【相談事例】農地を分筆して、その一部を宅地に転用したい

記事更新日:

 

相談者:30代男性(公務員)

私は妻と子ども2人で暮らしています。上の娘が小学生になり、現在の住まいが手狭になっているため、親族が所有する遊休農地を譲り受け、戸建て住宅を建てる計画を立てています。

所有者から「農地転用の手続きが必要」と言われていたので、市の農業委員会事務局に相談に行ったところ、「農地転用の見込みはあるが、面積が広すぎるので、分筆が必要」と言われました。

このような場合、分筆は必ず行わなければならないのでしょうか。仮に分筆なしで住宅を建てようとすると、どのような問題が生じるのでしょうか。また、分筆をして住宅を建てるまでのスケジュールについても教えてください。

回答:行政書士

ご相談ありがとうございます。
それでは、分筆の必要性とスケジュールについて、一般的な説明をさせていただきます。

一般に、住宅の敷地とするための農地転用は、転用面積が500㎡以下という基準が定められていることが多いです。ですので、分筆の有無を問わず、これを上回る面積の農地を転用する場合は、一筆の農地の一部を転用することになります。

そして、分筆をすることは、農地転用の許可の要件ではないため、申請時に分筆がなされていなくても許可が出ないわけではありません。
※分筆なしで申請をする場合は、一筆の農地のどの部分を転用するのかを明示した、土地家屋調査士などが作成した図面を添付することになります。

しかし、一筆の一部について許可した農地転用許可証は、所有権移転登記の原因証書とならない場合があるため、不動産登記によって自らの権利を主張できないという問題が生じるおそれがあります。農業委員会事務局の担当者は、このことを伝えたかったのでしょう。

土地家屋調査士が分筆をする際には、測量を経た上で、隣地所有者や道路管理者の立会いの下、土地の境界を確定します。(これを確定測量と呼びます。)そして、土地のどの部分に建物を配置するかなどを考慮しながら、土地の分筆を行うことになります。

土地家屋調査士や関係者のスケジュールにもよりますが、確定測量と分筆には少なくとも1~2か月程度の時間がかかります。その間、行政書士は、土地家屋調査士の業務の進捗を確認しながら、分筆後すぐに農地転用の申請ができるように書類の準備をします。

ただし、ご存じのように農地転用の締切日は月1回であることが多いため、タイミングによっては、申請までに余分な時間がかかってしまうこともあります。なお、住宅建築のための工事に着工できるのは、農地転用の許可証が出てからになりますので、申請から1か月後となります。

農地転用手続きで確定測量と分筆が求められるのはなぜか

住宅などの建築物の建築を目的とする農地転用手続きにおいては、確定測量と分筆をすることが法令上、または事実上必須のものとなっています。その理由を3つ挙げるとしたら、次のようなものになるでしょう。

1.土地の境界をめぐるトラブルを防止するため

境界が確定していない土地を購入することにリスクを感じるのはごく当然の感覚だと思いますが、いかがでしょうか。したがって、農地法5条の許可によって土地の所有者が変わる場合は特に、隣接地の所有者の同意を得て境界を確定させ、境界杭などで明示しておく必要性があります。

また、農地の場合、耕作しているうちに土地の境界が分からなくなってしまうことも多いようです。境界杭がなくなってしまうこともあり得ます。そのため、確定測量をもとに地積測量図を法務局に残しておくことが重要になります。

2.農地転用の許可要件をクリアするため

農地転用の一般基準の中に、次のような規定があります。農地を無駄につぶすことがないように定められた規定だといえます。

申請に係る農地の面積が、申請に係る事業の目的からみて適正と認められること(農地法施行規則第47条第4号)

農地法上の根拠はないようですが、前述したように、一般住宅の敷地にするための農地転用の面積は、「500㎡以内が適正」という内部規定がある自治体がほとんどです。したがって、これよりも広い農地を転用しようとする場合には、一筆の農地の一部の転用ということになります。

そして、土地の一部の転用を申請する場合、土地家屋調査士が作成した地積測量図の添付が求められます。地積測量図の作成のためには確定測量が必要です。そのため、実際には分筆をしないで農地転用をするケースはごくわずかなのではないかと考えます。

3.所有権などの権利を第三者に対抗するため

不動産登記の権利部に所有者として名前が載っていると、その土地の所有権を第三者に主張することができます。逆にいえば、売買によって所有権を取得しても、二重売買によって他の人が先に登記をしてしまえば、「対抗力」を失ってしまうのです。

先に解説したように、分筆なしで申請した農地法5条許可申請の許可証は、その後の所有権移転登記の原因証書とならない場合があります。そうすると、取得した土地の所有権を登記によって公示できないことになり、権利関係が不安定になってしまいます。

土地や住宅などの貴重な財産を守るためには、土地家屋調査士が行う確定測量と分筆は欠かせないものだといえるでしょう。

※その他土地家屋調査士の業務については、農地転用において土地家屋調査士はどのような役割を果たしているのか の記事をご一読ください。

農地を宅地に転用して住宅を建てたい方へ、行政書士からひと言

農地に住宅を建てるための農地転用の申請の際には、この記事で紹介した確定測量と分筆の他にも、工事着工前に済ませておかなければならないことが少なくありません。

例えば、農地の売主(譲渡人)が他の農地で違反転用に該当する行為をしていないでしょうか。この場合、違反状態が解消されなければ新たな申請は受け付けてもらえません。最悪の場合、工事に着工するまで数か月の遅れが生じてしまうこともあります。

また、工事車両の出入口を設置するために道路を切り下げたり、道路の法面の埋め立てや切り取りを行う場合には、事前に道路法24条に基づく道路工事施工承認申請が必要になります。

土木工事や建築工事に関する諸々の申請は、施工業者や建築士を信頼するとしても、売主の違反転用の有無はご自身で確認しておくとよいと思います。

福島県内の農地転用や開発に関する無料相談のご予約

対面でのご相談、Zoomなどのオンラインでのご相談については、初回無料にて承っています。まずは、お電話またはメールにてお問い合わせください。できるだけ早く面談の時間を設定させていただきます。

お電話での相談のご予約

「農地のホームページを見た」とお伝えください。

受付時間:月-土9:00-18:00(日祝休み)
メールでの相談のご予約・お問い合わせ

メールは365日、24時間承っております(返信は通常1~2営業日中に送信いたします)
メールでの無料相談は承っておりません。あらかじめご了承ください。

    行政書士佐藤勇太事務所(以下、「当事務所」という。)は、当サイトの来訪者の個人情報について、以下のとおりプライバシーポリシーを定めます。

    1.事業者情報

    事務所名:行政書士佐藤勇太事務所
    住  所:福島県二本松市大壇157番地1
    代  表:行政書士 佐藤勇太

    2.個人情報の取得方法

    当事務所は、来訪者がお問い合わせフォームから送信する際に、氏名・電話番号・メールアドレスを取得させていただきます。

    3.個人情報の利用目的

    お問い合わせへの対応とその後の相談、業務の遂行、アフターサービスのために利用させていただきます。
    また、当サイト内で「このようなお問合せがありました」と紹介させていただく場合もあります。

    4.個人データを安全に管理するための措置

    当事務所は、個人情報を正確かつ最新の内容に保つよう努め、不正なアクセス・改ざん・漏えい・滅失及び毀損から保護するための措置を講じます。

    5.個人データの第三者提供について

    当事務所は、法令及びガイドラインに別段の定めがある場合を除き、同意を得ないで第三者に個人情報を提供することは致しません。

    6.保有個人データの開示、訂正

    当事務所は、本人から個人情報の開示を求められたときには、遅滞なく本人に対しこれを開示します。
    個人情報の利用目的の通知や訂正、追加、削除、利用の停止、第三者への提供の停止を希望される方は当事務所までご連絡ください。

    7.個人情報取り扱いに関する相談や苦情の連絡先

    当事務所の個人情報の取り扱いに関するご質問やご不明点、苦情、その他のお問い合わせは、お問い合わせフォームよりご連絡ください。

    8.Google Analyticsの利用について

    当サイトではホームページの利用状況を把握するためにGoogle Analyticsを利用しています。そのためGoogle Analyticsから提供されるCookie を使用していますが、Google Analyticsによって個人を特定する情報は取得していません。

    9.免責事項

    当サイトに掲載されている情報の正確性には万全を期していますが、利用者が当サイトの情報を用いて行う一切の行為に関して、一切の責任を負わないものとします。
    当事務所は、利用者が当サイトを利用したことにより生じた利用者の損害及び利用者が第三者に与えた損害に関して、一切の責任を負わないものとします。

    10.著作権・肖像権

    当サイト内の文章や画像、すべてのコンテンツは著作権・肖像権等により保護されています。無断での使用や転用は禁止されています。

    2023年5月1日制定

    ページトップへ戻る