農地に太陽光パネルを設置するための手続きを行政書士が解説

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福島県の行政書士、佐藤勇太です。

農地を農地として管理するためには耕作や除草を続けていく必要があり、農業者以外の方にとっては大きな負担となるものと思います。また、ご高齢となり、耕作ができなくなっている方も多いことでしょう。農地として使っていないのであれば、売却してしまうか、何らかの形で活用したいとお考えの方も多いのではないでしょうか。

そもそも農地は日当たりが良く平らな土地が多いので、太陽光パネルを設置するには適した土地です。再生可能エネルギーの普及は国の政策でもあります。しかし、国民に安定して食料を供給するためには、生産性の高い優良な農地を保全する必要があります。私たちは、農地転用の仕組みを理解し、当事者の様々なニーズを調整しなければなりません。

この記事では、農地に野立ての太陽光パネルを設置する際に必要となる、農地転用とそれに付帯する手続きについて解説をしています。皆様が事業を円滑に進めていくための一助となれば幸いです。

太陽光パネルの設置が可能な農地について解説

太陽光パネルの設置のための農地転用が許可され得るのは、原則として第3種農地または第2種農地に限られ、農業地区域内農地(農振農用地)、甲種農地、第1種農地では許可されることはありません。それでは、第3種農地、第2種農地とはどのような地域の農地なのでしょうか。

第3種農地とはどのような農地なのか

第3種農地は、市街地の区域内または市街地化の傾向が著しい区域内にある農地で、次のいずれかに該当するものをいいます。

  1. 道路、下水道その他の公共施設または鉄道の駅その他の公益的施設の整備の状況が次の①、②に掲げる程度に達している区域
  2.  宅地化の状況が次の③~⑤に掲げる程度に達している地域
  3.  土地区画整理事業の施行に係る区域

第3種農地は以下に示す判断基準により、次の6種類に分類することができます。

①公共施設便益区域内農地

水管、下水道管またはガス管のうち2種類以上が埋設されている道路の沿道の区域であって、容易にこれらの施設の便益を享受することができ、かつ、おおむね500m以内に2以上の教育施設、医療施設その他の公共施設または公益的施設が存すること。

②公共施設至近距離区域内農地

おおむね300m以内に次に掲げるいずれかの施設が存すること。

  • 鉄道の駅、軌道(路面電車)の停車場、船舶の発着場
  • 高速自動車国道(高速道路)の出入口
  • 県庁、市役所、町村役場(支所を含む)
  • その他上記に類する施設(バスターミナルなど)

③市街地内農地

住宅、事業用店舗または公共施設、公益的施設が、50m以内の間隔でおおむね50戸以上連たんしており、それらの施設の外縁部を結んだ線の内側に存する農地であること。

④宅地進行化区域内農地

街区(道路、鉄道または河川、水路等によって区画された地域のこと)の面積に占める宅地面積割合が40%を超えていること。

⑤非線引都計用途地域内農地

非線引き(市街化区域と市街化調整区域を区分していない)の都市計画区域内で、用途地域が定められていること。ただし、農業上の土地利用との調整が調ったものに限られる。

⑥土地区画整理域内農地

土地区画整理事業の施行に係る区域にあること。

第3種農地においては、一般基準によって許可できないと判断される場合を除き、農地転用は原則として許可されることになっています。

第2種農地とはどのような農地なのか

第2種農地とは、第3種農地に近接する区域その他市街地化が見込まれる区域内にある農地のことをいいます。第2種農地は以下に示す判断基準により、次の3種類に分類することができます。

①街区形成区域内農地

道路、下水道その他の公共施設または鉄道の駅その他の公益的施設の整備の状況が第3種農地の農地区分①、②に該当することが見込まれる区域において、相当数の街区を形成している農地

②公共施設近距離区域内農地

道路、下水道その他の公共施設または鉄道の駅その他の公益的施設の整備の状況が第3種農地の農地区分①、②に該当することが見込まれる区域で、かつ第3種農地の農地区分②の駅、役所等の施設の周囲おおむね500m以内の区域

※当該施設を中心とする半径500mの円で囲まれる区域の面積に占める宅地面積が40%を超える場合には、半径1㎞まで延長が可能です。

③市街地近傍小集団農地

宅地化の状況が、第3種農地の農地区分③、④、⑤になることが見込まれる区域として、宅地化の状況が第3種農地の①に掲げる程度に達している区域に近接する区域内にある農地の区域で、その規模がおおむね10ha未満であるもの

また、農用地区域内にある農地以外で、甲種農地、第1種農地、第3種農地のいずれの要件にも該当しない農地(その他の農地)についても、第2種農地と判断されます。具体的には、中山間地域などに存在する農業公共投資の対象となっていない、小集団の生産性の低い農地がこれに当たります。

第2種農地で農地転用が許可されるのは、原則として、太陽光パネルの設置・発電という事業の目的が第3種農地や農地以外の土地では達成できないと認められる場合に限られます。そのため、第2種農地で農地転用の許可申請を行う際には、後で解説する「土地選定理由書(比較表)」の添付が必要になります。

市街化調整区域での太陽光パネルの設置について

市街化調整区域では、建築物の建築を目的とする土地の区画形質の変更(開発行為)が禁止されているため、建築物の建築のために行う農地転用は、許可されません。開発許可を受けられる見込みがなければ、農地転用に許可を出しても意味がないからです。

しかし、太陽光パネルについては、建築基準法上の建築物に該当しない扱いがされているため、開発許可を受けることは不要になります。そのため、市街化調整区域においても、農地区分が第3種農地または第2種農地であれば、開発許可は不要となり、農地転用の許可を受けることは可能になります。ただし、太陽光パネルに付属する施設(建築物)については別途検討が必要です。

福島県の開発許可制度の手引(令和2年4月)によれば、「太陽光発電設備に付属する管理施設及び変電施設を設置する施設である建築物(付属設備)を建築する場合で、必要不可欠な場合は、都市計画法第34条第12号の規定に基づいて、許可をすることができる」とされています。

つまり、この規定に基づく開発許可が受けられる見込みがある場合、付属施設を目的とする農地転用も許可され得るということになります。

太陽光パネル設置のための農地転用手続き

農地に野立ての太陽光パネルを設置するための手続きですが、まずはその農地が都市計画法上の市街化区域内にあるのかどうかによって違いがあります。市街化区域内の農地を転用する場合には、許可申請は不要となり、農業委員会への届出という簡易的な手続きで済ますことができます。

申請農地が、市街化区域以外の区域にある場合、農地に太陽光パネルを設置するためには農地転用の許可を受ける必要があります。この許可申請手続きについては、自治体独自の条例や要綱が設けられている場合も多いので、事前にしっかりと確認することが重要です。

また、申請時に添付書類として提出する資料も、通常よりも多く、そして自治体ごとに異なっています。ここでは、一例として、福島市で提出が求められている資料をご紹介します。

太陽光パネル敷地への転用申請の必要書類

太陽光パネルの設置のための農地転用の際には、通常のものに加えて、次のような資料の添付が求められることになります。図面の作成にあたっては、細かい指示がありますので、その指示通りに作図しなければなりません。

  • 現況図
  • 配置図
  • パネル、パワーコンディショナーの平面図・立面図
  • 発電モジュール及びシステム等の仕様書
  • 経済産業省の再生可能エネルギー発電設備の認定書等
  • 電気事業者の電力系統に連携することの確実性が確認できる書類
  • 太陽光発電設備導入による売電収入等シミュレーション
  • 事業費見積書
  • 撤去費の費用負担に係る合意を証する書面や設備設置者が自ら撤去する旨の書面
  • 雨水処理、汚水処理、取水計画書
  • 維持管理方法の説明資料
  • 太陽光発電に関するガイドライン届出書
  • 隣地所有者及び周辺住民説明状況等の調書

なお、国の固定価格買取制度の適用を受けない非FIT型の発電設備の場合、売電をする相手方との契約書が求められることがあります。この場合についても、事業見積書などによって採算がとれることを疎明(証明)する必要があります。

土地選定理由書(比較表)とはどんな書類か

ところで、太陽光パネルは住宅が立ち並ぶような市街地に設置されるよりも、郊外や中山間地域の遊休農地を利用して設置されることが多く、この場合、転用する農地は第2種農地である可能性が高くなります。

この場合、「いろいろ候補地を探したけれど、申請地以外に適当な土地が見つからなかった」ということを書面上で疎明(証明)することになります。この疎明書類が土地選定理由書です。過去に作成した書類をご紹介します。

(※クリックで拡大表示)

 

このように、最初に太陽光パネルの設置に必要な土地の条件を書き出し、候補地を申請地以外に3~4か所挙げて、条件に該当するかどうかを比較検討していきます。代替地が見つからなかったことが伝わるように作成します。

農地転用をお考えの太陽光発電事業者の皆様へ

野立ての太陽光パネルの設置については、固定価格買取(FIT)制度が始まった10年ほど前と比較すると、なかなか難しい状況になっているように思われます。設置可能な農地が減少していますし、景観上の問題や維持管理の問題などから、行政による規制や指導が強化されています。そして、買取価格は著しく低下しています。

そのため、太陽光パネルの設置のための手続きを進めるにあたっては、自治体の条例や要綱までしっかりと調査するなど、これまで以上に気を遣わなければならないでしょう。また、パネルを設置した後の維持管理や撤去をどうするかなど、許可後のフォローについても、役所に説明できるようにしておかなければなりません。

再生エネルギーの固定価格買取(FIT)制度により、太陽光パネルの設置は急速に進みましたが、その急速さは様々な問題を生み出すことにもなりました。その諸問題を解決するために、政府は制度改正を重ねてきましたが、度重なる制度改正は、発電事業者にとって先行きが見えにくい状況を作りだしていることと思われます。

経営環境が厳しくなっていく中でどのように事業展開をしていくのか、その判断をするためには、法令等による規制を把握し、更新し続ける必要があります。私は、行政規制の専門家である行政書士として、農地転用などの手続きを適正に処理することはもちろん、お客様の事業の発展に役立つような情報提供を続けていきたいと考えています。

※ 営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)における農地転用手続きについては、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)における農地転用について行政書士が解説 の記事をご参照ください。

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