
宅地造成や太陽光発電設備の設置、農地改良、残土処分場などで盛土や切土を行う場合、その規模によっては盛土規制法の許可や届出が必要です。工事を計画する際には、土地の用途だけで判断せず、盛土・切土の高さや面積、土石を一時的に堆積する規模まで把握しておく必要があります。
「宅地造成及び特定盛土等規制法(通称:盛土規制法)」は2023年5月26日に施行され、福島県では2024年9月24日までに県内全域で規制が開始されています。現在は、福島県内で一定規模を超える盛土・切土や土石の堆積を行う際の通常の許可・届出制度として運用されています。
この記事では、盛土規制法が対象とする工事の規模、許可を要しない工事、福島県における許可申請から工事完了までの流れを解説します。2026年4月に見直された福島県独自の許可対象基準の運用についても取り上げます。
目次
盛土規制法の概要を解説
盛土規制法は、従来の「宅地造成等規制法」を抜本的に改正した法律です。2021年に静岡県熱海市で発生した大規模な土石流災害などを背景として、土地の用途や盛土を行う目的にかかわらず、危険な盛土等を全国一律の基準で包括的に規制する制度が設けられました。
規制の対象となるのは、一定規模以上の土地の形質の変更である盛土・切土と、一時的な土石の堆積です。例えば、次のような工事や行為について、規制区域内で一定規模以上の盛土・切土や土石の堆積を行う場合は、盛土規制法の許可または届出が必要です。
- 宅地を造成するための盛土・切土
- 太陽光発電設備の設置のための盛土・切土
- 残土処分場における盛土
- 土砂のストックヤードにおける一時的な堆積
農地についても、農地であることを理由に一律に対象外となるわけではありません。通常の営農行為の範囲を超える農地改良や田畑転換などで一定規模以上の盛土・切土を行う場合には、盛土規制法の許可が必要になることがあります。
宅地造成等工事規制区域と特定盛土等規制区域
盛土規制法による規制区域は、「宅地造成等工事規制区域」と「特定盛土等規制区域」の2つに区分されています。

宅地造成等工事規制区域は、市街地や集落、その周辺など、盛土等が行われた場合に人家等へ危害を及ぼすおそれがある区域です。特定盛土等規制区域は、市街地や集落等から離れていても、地形などの条件から人家等へ危害を及ぼすおそれがある区域です。
福島県内では全域で盛土規制法による規制が開始されていますが、土地によって指定されている区域が異なります。そのため、具体的な計画では、最初に対象地がどちらの区域に入っているのかを把握する必要があります。
特定盛土等規制区域は、宅地造成等工事規制区域より許可対象となる規模が大きく設定されています。ただし、許可対象規模に達しなくても、一定規模以上の工事については着手する30日前までの届出が必要です。「特定盛土等規制区域だから手続きが不要」と判断しないよう注意してください。
以下では、まず宅地造成等工事規制区域で許可が必要となる規模を説明します。
盛土規制法で許可が必要となる工事について解説
宅地造成等工事規制区域では、一定規模を超える盛土・切土や土石の堆積について、工事に着手する前に許可を受ける必要があります。
以下の図は、国土交通省・農林水産省・林野庁が事業者向けに示している規制対象の考え方です。
なお、盛土規制法における「崖」とは、地表面が水平面に対して30度を超える角度をなす土地で、硬岩盤を除くものをいいます。建築基準法や福島県建築基準法施行条例などで扱われる崖と、必ずしも同じ考え方ではありません。
①盛土で高さが1mを超える崖を生ずるもの

盛土によって高さが1mを超える崖が生じる場合には、許可の対象となります。
盛土をする土地全体の高さだけではなく、盛土によって形成される崖の高さと角度を把握する必要があります。
② 切土で高さが2mを超える崖を生ずるもの

切土によって高さが2mを超える崖が生じる場合も許可の対象です。
切土については、高さだけでなく、切土後の地表面が30度を超える崖になるかどうかが判断に関係します。
③ 盛土と切土を同時に行い、高さが2mを超える崖を生ずるもの

盛土と切土を同時に行う場合には、盛土部分の高さが1m以下であっても、切土と合わせて高さが2mを超える崖が生じれば許可の対象となります。
造成計画では、盛土と切土を個別に判定するだけでなく、工事後の地形全体から検討する必要があります。
④ 盛土で高さが2mを超えるもの(崖を生じないもの)

崖を生じない盛土であっても、高さが2mを超える場合には許可が必要です。
この点は切土との違いです。盛土の場合には、30度を超える崖が形成されなくても、高さによって許可対象となる場合があります。
⑤ 盛土または切土をする土地の面積が500㎡を超えるもの

①から④までに該当しない盛土・切土について、福島県では、標高差30cmを超える部分の面積が500㎡を超える場合に許可対象となります。
ここで、福島県では2026年4月1日から、盛土規制法の許可対象基準に関する県の運用が見直されています。これは盛土規制法や県条例の改正によるものではなく、標高差30cm以下の盛土等を許可不要とする盛土規制法施行規則第8条について、福島県が許可対象を判定する際の取扱いを変更したものです。
例えば、盛土をする土地全体が800㎡あっても、標高差が30cmを超える部分が400㎡であれば、この面積基準による許可等は不要です。反対に、30cmを超える部分が500㎡を超える場合には、30cm以下の部分を含めた盛土・切土全体が許可等の対象となります。
なお、この取扱いは福島県の現在の運用です。福島市、郡山市、いわき市については各市が盛土規制法を所管しているため、それぞれの取扱いをチェックする必要があります。
⑥ 最大時に堆積する高さが2mを超え、かつ面積が300㎡を超えるもの

土石を一時的に堆積する場合、最大時の高さが2mを超え、かつ堆積する土地の面積が300㎡を超えるものは許可の対象となります。
土石の堆積については恒久的な盛土とは区別されており、許可期間は5年以内です。一定期間土砂を仮置きするストックヤードなどでは、この基準との関係を検討する必要があります。
⑦ 最大時に堆積する面積が500㎡を超えるもの

⑥に該当しなくても、土石を堆積する土地の面積が500㎡を超える場合には許可対象となる可能性があります。
この場合も、福島県では2026年4月1日以降、標高差30cmを超える部分の面積を基準とする運用が行われています。標高差30cmを超える部分が500㎡以下であれば、この面積基準による許可等は不要ですが、500㎡を超える場合には堆積する土地全体が対象となります。
また、土石の堆積について面積を算定するときは、事業用地全体ではなく、実際に土石を堆積する土地の面積を用います。
許可を要しない工事とは
一定規模を超える盛土・切土や土石の堆積であっても、法令上、許可や届出を要しない工事があります。
ここでは、農地転用や土地開発の実務で関係することが多いものを取り上げます。
A) 開発許可を受けて実施される工事
都市計画法第29条第1項または第2項の開発許可を受けて行われる工事で、盛土規制法の許可対象となるものについては、原則として盛土規制法の許可を受けたものとみなされます。
ただし、「開発許可を受ければ常に盛土規制法について別の対応がなくなる」という取扱いではありません。福島県の現行手引では、規制区域指定前に開発許可を受け、区域指定後に工事へ着手する場合など、開発許可によるみなし許可にならないケースが示されています。
また、みなし許可となる工事も盛土規制法の技術的基準に適合する必要があります。工事の規模や工程によっては、盛土規制法に基づく標識の掲出、中間検査、定期報告なども必要となります。
B) 工事の施行に付随して行われる土砂の堆積
工事に使用する土石や、その工事から発生した土石を、本体工事に付随して工事現場またはその付近へ一時的に堆積する場合には、一定の条件を満たせば許可等が不要となります。
現在の福島県の手引では、請負契約図書や工事施工計画書などで工事現場として位置付けられた土地について、本体工事が行われている土地との直線距離が10km以内であれば、離れた土地であっても「工事の現場」として取り扱われる場合があります。
一方、工事で発生した残土を、本体工事とは別に管理される残土置場やストックヤードへ搬出して堆積する場合は、「工事の施行に付随して行われる土石の堆積」としての許可・届出不要の取扱いには該当しません。
したがって、その盛土等が許可または届出の対象規模に該当する場合は、許可または届出が必要です。
なお、現在の福島県の手引では、工事で発生した残土の処分方法を請負業者に一任し、その請負業者の責任で別の規制区域へ搬出して盛土を行う場合には、請負業者自身が盛土規制法上の「工事主」となる可能性があることも示されています。
また、残土処分場で工事残土の受入れを業として行う事業者が工事主となる場合もあります。
C) 農地及び採草放牧地において行われる通常の営農行為
地や採草放牧地で行われる通常の営農行為は、盛土規制法の対象外です。
通常の生産活動やほ場管理のための耕起、代かき、整地、畝立、けい畔の新設・補修・除去、表土の補充であって、その前後の地盤面の標高差が1mを超えないものなどが対象として示されています。
営農行為に該当するかどうかは、所在地の農業委員会事務局など農地担当部局へ事前に相談する取扱いとなっています。
一方、農地改良や田畑転換という目的であっても、通常の営農行為の範囲を超える盛土・切土については規制対象となります。
県北建設事務所では、地盤面から1mを超える盛土または切土が発生し、その面積が宅地造成等工事規制区域では500㎡、特定盛土等規制区域では3,000㎡を超える場合には、許可申請が必要と案内しています。
また、県北建設事務所では、周囲より低い農地を畦畔や道路等の四方の高さに合わせて平坦にし、周囲の高さに対して凹凸を生じさせない盛土・切土については、面積や高さによらず許可対象外とする取扱いも示されています。
二本松市や本宮市など県北管内で農地改良を検討する場合には、この取扱いも踏まえて計画内容を検討することになります。
盛土規制法の許可申請手続きの流れ
ここからは、福島県が2026年5月に改訂した「宅地造成及び特定盛土等規制法に基づく許可申請等の手引(第7版)」をもとに、許可申請から工事完了までの流れを説明します。
福島市、郡山市、いわき市については各市が制度を所管しており、福島県の手引と取扱いが異なる場合があります。これら3市で工事を行う場合には、それぞれの市の制度を基準に手続きを進める必要があります。
1. 許可申請前
盛土規制法の許可申請を行う前には、計画している盛土・切土や土石の堆積が許可対象になるのか、技術的基準を満たす計画となるのかを検討します。
福島県では、事前相談は法令上の義務ではありませんが、設計の手戻りなどを防ぐため、基本的に事前相談を行うよう案内しています。特に面積や高さが許可基準付近となる計画では、測量結果や造成計画を基に許可対象となるかを事前にチェックすることが重要です。
許可申請を行う場合には、土地について権利を有する者の同意を得るとともに、工事内容を周辺住民へ事前に周知します。
周知方法として、説明会の開催、工事内容を記載した書面の配布、工事内容の掲示とインターネットを利用した閲覧が定められています。一定の渓流等で高さ15mを超える盛土を行う場合には、説明会の開催が必要です。
2. 許可申請・許可
申請書、土地の状況や造成計画を示す図面、権利者の同意に関する書類など、必要な書類を揃えて申請します。
福島市、郡山市、いわき市では各市が許可を行い、それ以外の市町村については福島県が許可を行います。福島県所管の案件では、土地を管轄する建設事務所が申請窓口となります。
許可審査では、主に次の事項が審査されます。
- 災害防止のための技術的基準に適合していること
- 工事主が工事を行うために必要な資力・信用を有すること
- 工事施行者が工事を完成させるために必要な能力を有すること
- 土地の所有者等の同意を得ていること
福島県では、宅地造成・特定盛土等に関する工事の許可について30日、土石の堆積に関する工事の許可について14日の標準処理期間を定めています。
ただし、書類の補正に要する期間や休日などは含まれないため、実際の事業計画では余裕を持って申請する必要があります。
3. 工事着手
許可を受けた工事主は、工事現場の見やすい場所に所定の標識を掲出し、工事に着手したときは速やかに工事着手届を提出します。
工事の規模によっては、中間検査や定期報告も必要です。中間検査は、一定規模以上の工事で、盛土前または切土後の地盤面に排水施設を設置する工程を対象として行われ、施工後にはチェックできなくなる部分の安全性を検査します。
定期報告もすべての許可工事に必要となるわけではありません。一定規模以上の工事について、許可日から3か月ごとに工事の進捗状況などを報告します。
4. 工事完了
宅地造成または特定盛土等に関する工事が完了した場合には、許可内容や技術的基準に適合しているかについて完了検査を受けます。
土石の堆積については、許可された期間内に堆積した土石をすべて除却したうえで、確認申請に基づくチェックを受けます。完了検査または確認申請は、工事完了から4日以内に申請する取扱いとなっています。
盛土や切土は、工事が完成すると地中に隠れてしまう部分もあります。そのため、施工中の写真や出来形、品質管理に関する資料を適切に残しておくことも、完了検査へ対応するうえで重要です。
盛土規制法の対象になるか事前に検討する
福島県内では盛土規制法による規制がすでに全面的に運用されており、宅地造成、太陽光発電設備の設置、農地改良、残土処分場、ストックヤードなど、さまざまな土地利用に関係しています。
土地の用途だけから許可の要否を判断せず、区域、盛土・切土の高さ、面積、工事前後の標高差、土石の堆積方法を具体的に把握する必要があります。
特に福島県では、2026年4月1日から、面積500㎡を超える盛土等について「標高差30cmを超える部分の面積」を用いる運用へ変更されています。造成面積が500㎡を超えるという理由だけで結論を出さず、現況地盤と計画地盤を図面上で照合して判定することが重要です。
また、盛土規制法の許可が不要であっても、別の法令や条例による手続きが必要になることがあります。
福島県では、3,000㎡以上の土地の埋立てについて「福島県土砂等の埋立て等の規制に関する条例」が関係し、盛土規制法の許可を受ける事業であっても、一定の場合には土砂搬入の届出や工事中・完了後の土壌検査が必要です。
盛土規制法では、無許可での工事や命令違反などについて、違反内容に応じて最大3年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金が定められ、法人に対しては最大3億円以下の罰金が科される規定も設けられています。
事業計画の早い段階で許可・届出の要否を検討し、必要な手続きと工事工程を組み立てておくことが重要です。




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