【2024年4月改定】資材置場を目的とする農地転用許可の取扱いについて

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資材置場を目的とする農地転用は建築物の建築が伴わないため、簡単にできるとイメージしがちです。住宅の建築と比較すれば、費用もかかりません。しかし、実際はイメージとは逆に、転用の必要性や転用面積の妥当性が厳しくチェックされる手続きとなっています。

その理由は、他の目的に使用するという意図を隠して、資材置場を目的とする農地転用の申請がなされることが見られるからです。特に多いのが、許可後に事業目的が太陽光パネルの設置に転換されるケースです。

このような行為を防ぐために、これまでも慎重な対応がなされていましたが、農林水産省の福島県知事宛の通知「資材置場等目的での農地転用許可の取扱いについて」(5農振第3179号:令和6年3月28日)により、さらに厳しい取り扱いがなされることになりました。

この記事では、資材置場を事業目的とする農地転用の特徴を確認した上で、直近の取扱いの変更について解説を試みています。「とりあえず新しい通知の内容を知りたい」という方は、前半部分を後回しにしても十分に理解できるかと思います。

資材置場目的の農地転用は市街化調整区域でも可能

そもそも資材置場とは、建設業者が業務で使用する鉄骨、コンクリート、砂利などの資材や重機などを保管・管理するための土地のことです。建築行為が行われなければ、開発許可が不要になるため、市街化調整区域の土地の活用としての需要もあります。

もっとも、市街化調整区域でも利用可能といっても、その土地が農地である場合には、農地転用の許可の要件を充たしていなければなりません。許可なしに資材を置くと違反転用となり。農地法第51条に基づく処分の対象となります。

ご存じのことかもしれませんが、農地転用の許可要件を充たすには、立地基準と一般基準の双方の基準をクリアする必要があります。立地基準とは、農地区分に応じた許可基準のことで、一般基準とは農地区分にかかわらず適用される許可基準です。

そして、資材置場を目的とする農地転用は、一般基準において、少しばかり難易度が高くなっています。本当にその場所に資材置場が必要なのか、「隠れた意図」が存在していないかを許可権者が慎重に見極めるためです。

資材置場目的の農地転用、申請の際の注意点

資材置場を目的とする農地転用の申請では、転用の必要性(その土地でなければならない理由を含む)と面積の妥当性を書面や図面で的確に説明することが大切です。そのためには、審査する役所の手の内を知るのが一番でしょう。

そこで、福島県の「農地法関係事務処理の手引」の中で、資材置場を目的とする申請の場合の留意事項として記載されている内容を紹介します。

申請者(転用事業者)の信用について

過去に資材置場目的で農地転用の許可を受けた事業者から新たな申請があった場合には、過去に実施した転用事業が当初の計画どおりに実施されているかどうか確認がなされます。許可なく事業計画の変更をすることは禁じられていますので、申請者の信用、誠実性がチェックされることになります。

当然、申請者が他の案件で違反転用をしている場合には、それを是正しないと許可を受けることはできません。また、過去に許可を受けた転用事業者が、特別な理由がないのにもかかわらず、計画どおりに転用事業を行っていない場合も同様です。

申請者の職業(事業内容)との関連性について

資材置場を目的とする農地転用の申請においては、申請者の事業内容が確認され、転用事業の計画との整合性が確認されることになります。例えば、定款の事業目的などから建設業を営む旨が確認できないような場合には、整合性が認められないということになります。

また、申請にあたっては、資材の種類や数量を図面の中で詳しく説明する必要があります。これについても、虚偽の申請を防止するためであると考えられます。

既存の資材置場がある場合

申請者(転用事業者)が既に資材置場を設けている場合には、その面積と利用状況が確認されます。既存の資材置場が有効利用されていない場合(余白が多い場合)には、新規の許可を出すのは慎重になるでしょう。

また、事業者の事務所や既存の資材置場との距離や位置関係も重要だと考えられます。既存の施設と離れているような場合には、合理的な説明が求められます。

※ これらの確認項目は駐車場を目的とする農地転用においても適用されます。露天の(屋根のない)駐車場も、目的外利用がされがちという点で共通しています。

資材置場目的の農地転用、取扱いの変更(2024年4月~)

以上の解説からもお分かりかと思いますが、資材置場目的などの建築物の建築を伴わない農地転用は、これまでも違反行為を防ぐための特別な取扱いがなされてきました。

しかし、農水省の通知によれば、近年、資材置場などに転用する目的で農地転用の許可を取得し、事業完了後1か月足らずの間に太陽光発電設備が設置される事例が複数確認されているようです。このような事例は、許可申請上の疑義を生じさせるものであり、不要不急の農地転用につながるおそれがあります。

これまで以上に厳格な対応が必要だと判断した農林水産省は、2024年3月28日、福島県知事に対して通知を出しました。この通知の内容は、4月1日から施行されています。以下では、その内容について解説します。

一時転用で目的が達成されるかどうかの検討と行政指導

申請者(転用事業者)から資材置場を目的とする農地転用の相談があった場合、許可権者は、恒久的な転用ではなく一時転用で目的が達成できる事案かどうかを検討することになります。そして、一時転用で目的が達成されると判断した場合、相談者に対して一時転用による申請を行うよう指導がなされます。

通知では、一時転用で目的が達成される例として、トンネル工事や分譲宅地の造成など工期が決まっている事業のために必要となる資材置場・駐車場が挙げられています。

逆にいえば、資材置場目的の農地転用について、期間の定めがない許可がなされるケースは、建設会社や建設資材のリース会社などが生業としてその地域で継続的に事業を行う場合に限定されることになります。

定期的な報告と現地確認

資材置場を目的とする恒久的な農地転用を許可する場合には、「工事の完了の報告があった日から3年間、6か月ごとに事業の実施状況を報告すること」という条件が付けられることになります。そして、その報告を受けた際には、必要に応じて農業委員会などによる現地確認が行われます。

報告や現地確認で事業目的とは異なった目的に使用されている場合は、許可を受けた者から事情を聴取したうえで、「偽りその他不正の手段により農地転用の許可を受けた者」に該当するかどうか判断し、該当する場合には、農地法51条(違反転用)による処分を検討することになります。

農地転用をお考えの太陽光発電事業者様へ

そもそも太陽光発パネルの設置は、東日本大震災に伴う原発事故の教訓から、国の政策の下で普及が進められたものです。しかし、国のエネルギー政策が変わったこともあり、太陽光発電事業者様に以前ほどの「追い風」が吹かなくなってしまいました。年々規制が厳しくなっているのが現状です。

経営環境が厳しくなっていく中でどのように事業展開をしていくのか、その判断をするためには、法令等による規制を把握し、更新し続ける必要があります。私は、農地転用などの手続きを適正に処理することはもちろん、事業の発展に役立つような情報発信を続けていきたいと考えています。

※ 以下は関連する記事となっていますので、併せてご一読ください。

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