【相談事例】農地転用の許可の効力は相続人に引き継がれますか

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相談者:農地転用の許可を受けた転用事業者(譲受人)の相続人

私の父は、家族が住む住宅を建てるために、知人のAさんから農地を購入することになりました。そこで父はAさんと共同して、農地法5条の許可申請を行い、無事に許可を受けることができました。

ところが、残念なことに、工事着工前の段階で父が急病で亡くなってしまいました。そこで、相続人の私は、その土地で住宅の建築を継続し、家族と一緒に住みたいと考えました。

この場合、私は父が受けた許可を引き継いで、建物の建築を進めることはできるのでしょうか。あるいは、行政に対して何らかの手続きが必要になるのでしょうか。

 

回答:行政書士

農地法4条許可申請を行い、許可権者の許可を受けなければ住宅の建築はできません。

農地転用の許可は、その審査にあたって、誰が転用を行うかが重要な要素であるので、一身専属的なものとされています。一身専属的という意味は、地位や資格がその人個人にのみ認められること意味しており、その地位や資格は相続や譲渡の対象となりません。

つまり、お父様が許可を得た転用行為の許可は、あくまでもお父様個人に対して与えられたものであり、たとえ相続人といえども、許可を受けたという地位は相続の対象とはなり得ないということになります。

ところで、農地法5条許可は、所有権の移転についての許可と農地の転用についての許可という2つの側面があります。

所有権の移転については、お父様が許可を受けた時点で有効に移転しており、また、相続による農地の取得は許可が不要なので、現在、この農地はお客様が所有者ということになります。

しかし、転用行為については、一身専属的なものですので、建築資金が準備できるのかなど、個人に属する要素について、改めて審査が必要となります。もちろん、設計や用途の変更がある場合には、ゼロベースで審査が行われます。

そして、この場合の農地転用の許可申請は、自己所有の農地の転用申請になりますので、農地法4条申請となります。この申請において、お客様の事業計画に基づく転用行為が認められれば、建物の建築が可能になるということになります。

農地転用の許可を受けた転用事業者が亡くなった場合の対応

今回のご相談のケースは、工事の着工前に転用事業者(譲受人)が死亡したケースですが、工事の着工後に死亡した場合、許可は引き継がれるのでしょうか。また、相続人が転用事業を実施する意思がない場合には、どのような手続きが必要になるのでしょうか。

転用事業の着工後、完了前に転用事業者が死亡した場合

長崎県の転用事務指針では、「転用実行者が亡くなった場合の対応」というWordファイルの文書を公開しています。この文書は、長崎県がこの問題について、令和3年9月に国の機関である九州農政局に照会した際の回答です。

これによれば、工事に着手後、完了前に相続人が継続する場合、着手前と同じように新たな4条許可が必要であると記載されています。つまり、国(少なくとも九州農政局の管轄内)の見解では、許可は引き継がれないということになります。

転用事業の着工後、完了後に転用事業者が死亡した場合

この場合、転用事業はすべて終わっていますので、改めて農地転用の許可申請を行う必要はありません。その代わり、工事終了後に遅滞なく工事完了報告書を提出しなければなりません。報告書が提出されないままに転用事業者が死亡してしまうとややこしい状態になります。どうぞご注意ください。

また、転用事業の実施によって、地目の変更が生じた場合、土地の所有者は地目変更の登記を行う義務があります。こちらについても忘れずに実施するようにお願いします。なお、地目変更の登記を扱う専門家は土地家屋調査士の先生になります。

転用事業の着手前で、相続人に転用事業を実施する意思がない場合

譲受人が計画した転用事業が実施されない場合でも、5条許可の1つの側面である所有権の移転については有効です。そして、譲受人の相続人は、農地法3条の許可なしで、農地の所有権を得ることができます。

一方、もう1つの側面である農地の転用については、譲受人=転用事業者の死亡によって、意味のないものになっています。この場合、先に紹介した九州農政局の文書では、相続人は、特に手続きを必要としないとされています。

このケースでは、相続人は農地を農地のまま所有することになります。そのため、この農地を耕作の目的で第三者に売却・賃貸する場合には、農地法3条許可が、他の用途に転用するために売却等する場合には、農地法5条許可が改めて必要になります。

まとめ

農地転用という事実行為の許可は、一身専属的な性質のものであるため、たとえ許可を受けた転用事業者(譲受人)の相続人であっても、その地位を引き継ぐことができません。そのため、同じ転用目的であっても、改めて転用の許可を受ける必要があります。

転用事業を引き継ぐ相続人が行う転用許可申請の形式は、農地法4条許可申請となります。なぜなら、譲受人が農地法5条の許可を受けた時に所有権は移転しており、死亡した後は、その相続人が所有者となっているからです。

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