住宅建築のために農地を転用したいと希望する方からのご相談を受けることがありますが、その農地が位置する区域によってはご希望に添えないこともあります。農地法による規制がかかることがあるからです。
平坦な土地が少ない日本では、農地(田や畑)をできるだけ効率的に利用し、食料を安定的に供給できるよう備えておかなければなりません。農地としての価値が高い土地は、できるだけ農地のままに維持しておきたいというのが国の方針です。
農地法では、農地の売買や賃借を行おうとする場合には、農業委員会の許可(3条許可)が必要とされています。この制度は、きちんと農業ができる人に農地を使ってもらうためにあります。
また、農地を農地以外のものにすること(農地転用)についても、農地法による規制があります。農地転用を行うためには、原則として都道府県知事の許可(4条許可、5条許可)が必要です。農地は一度転用してしまうと元に戻すことが困難です。そのため、立地の妥当性や転用の必要性について法令に基づいた審査が行われるのです。
自分の土地なのにどうして自由に使えないのかというお気持ちは分かりますが、勝手に転用してしまうと違法転用となり、原状回復の命令や罰則の適用があります。もし、農地を他の用途に使用する場合には、あらかじめ農地転用の手続きを行ってくださいますようお願いいたします。
目次
住宅建築のための農地転用でお困りのことはありませんか?
農地に住宅を建てる際に気をつけなければならないのが、その農地がどの区域にあるかによって、農地転用の手続きの難易度がかなり違うということです。区域や造成する宅地の面積によっては、都市計画法に基づく、開発許可という別の許可が必要になることもあります。開発許可が必要な場合、手続きの難易度はさらに上がります。
通常、敷地面積が500㎡未満の一戸建て住宅を建築する場合の手続きは以下のようになります。
市街化区域内の農地の場合 | 農地法の届出 |
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非線引き線引き都市計画区域内の農地の場合 | 農地法の許可 |
都市計画区域外の農地の場合 | 農地法の許可 |
市街化調整区域内の農地の場合 | 農地法の許可+開発許可 |
※ 市街化調整区域で住宅の建築が可能になるのは、開発許可が不要な「農家住宅」や都市計画法第34条の規定により許可される「分家住宅」などに限定されます。
その農地が上記の区域のどこにあたるのかについては、役所に問い合わせれば教えてもらえます。必要な書類についても、ほとんどの市町村ではHP上に記載されています。役所の方は基本的に親切です。
ただし、役所の方は公平にそして効率的に業務を遂行しなければならないため、常に申請者の利益になるようには動きませんし、忙しい場合には丁寧な対応ができない場合もあります。
申請書類の作成や添付書類の収集は、何度も経験しなければかなりの時間がかかってしまうものです。そもそも、必要とされている書類が何を指すのか、それを取るにはどうすればよいのか、知っている方はどれほどいらっしゃるでしょうか。
しかも、農地転用の申請には月ごとに締切日があります。そのため、締切日を1日でも過ぎてしまうと次の締め切りまで手続きが滞ってしまいます。工事着工が遅れてしまえば多くの関係者に影響が及んでしまいます。迅速な対応が求められることも多いものです。
住宅建築のための農地転用手続きの難しさ
私のこれまでの経験からいえば、農地転用をして住宅を建築しようとする方々が手続きの難しさを感じる理由には、以下のようなものがあると考えられます。
- そもそもその農地が転用可能なのか分からない。
- 住宅を建てる際に適用される法律関係が難しい。
- 申請書類の作成や添付書類の集め方が分からない。
- それくらいの期間で許可が受けられるのか見通しが立たない。
- どの行政書士に依頼すればよいか見当がつかない。
一般の方はもちろん、事業者の皆様の間にも、農地転用手続きは行政書士の業務であるという認識が浸透されつつありますが、迅速かつ正確な手続を行ってくれる専門家を一から探すのは難しいことでしょう。
また、すべての行政書士が農地転用手続きに熟達しているとは限らないため、いったい誰に任せればいいのか途方に暮れてしまうかもしれません。この記事を読んでいる皆様もそのうちの一人なのだろうと推察いたします。
住宅建築のための農地転用手続きとは?
さて、住宅建築のための農地転用手続きは、その農地のあるエリアによって異なることを解説しましたが、具体的にはどのような手続きになるのかを簡単に説明したいと思います。
都市計画法の適用による農地の区域区分
農地転用の申請を行うにあたっては、都市計画法はとても重要な法律です。都市計画法による区域区分によって、農地転用の手続きと難易度が変わってしまうからです。
都市計画法は昭和44(1969)年にできた法律で、都市の無秩序な広がりを防ぎ、健全な発展と秩序ある整備を図ることを目的としているものです。この法律では、市街化が進むことが予測される地域において、必要なに応じて都市計画区域を定め、都市の発展に計画性を持たせることが求められています。
そして、都市計画区域を「市街化区域」と「市街化調整区域」に分けることを可能にし、「市街化区域」においては土地の流通や建物の建築を促し、「市街化調整区域」では、市街化を抑制することにすることを規定します。
都市計画区域を「市街化区域」と「市街化調整区域」とに区分することを線引きすると呼ぶことが多いのですが、都市計画区域には線引きがされていない区域もあります。その区域のことを、「非線引き都市計画区域」といいます。
整理してみましょう。
- 農地には、都市計画区域内の農地と都市計画区域外の農地がある。
- 都市計画区域には、線引きがされている区域と「非線引き都市計画区域」がある。
- 線引きがされている区域は、「市街化区域」と「市街化調整区域」に区分される。
区域区分によって異なる農地転用手続き
では、それぞれの区域で必要な手続きについて具体的に解説いたします。
1.市街化区域内の農地
市街化区域は市街化(都市化)を進めていく区域ですので、農地を宅地に転用し、住宅を建築することは比較的容易です。この場合、都道府県知事の許可は不要となり、市町村の農業委員会への届出で済むことになります。締切日から10日程度で受理通知書を受領することができます。
2.非線引き都市計画区域内の農地
この区域内で一戸建ての住宅を建築する場合、開発許可は不要ですが、農地転用許可は必要になります。市街地の中にある農地であっても、そこが非線引き都市計画区域内である場合には届出ではありません。締切日から許可が下りるまでの期間は許可権者によって多少違いはありますが、およそ4~5週間です。
3.都市計画区域外の農地の場合
都市計画区域に指定されていない土地は、無秩序な都市化が起こる可能性がほとんどないといえます。大規模な開発ではなければ開発許可は不要ですが、住宅を建築する場合には農地転用の許可は必要です。許可が下りるまでの期間は、2と同じくらいです。ただし。このエリアにおいては、上下水道などのインフラが整備されていないことも多いです。
4.市街化調整区域内の農地の場合
この区域内では原則的に新たに建物を建築することはできず、例外に該当する場合に限って農地転用が許可されます。例外とは、例えば昔からその土地に住んでいた農家の方が、子どもに住宅を建てさせるようなケースです。
市街化調整区域で建物を建築するには、面積に関係なく開発許可の許可も受けなければなりません。開発許可の申請は、関係機関との協議や専門的な図面の作成などが必要となる難易度が高い手続きです。
もちろん、開発許可だけではなく農地転用の許可も必要です。開発許可の続きは別として、純粋に農地転用の許可を受けるまでの期間は、締切日から4~8週間となります。開発許可と農地転用の許可は、同時に許可されることとされています。
住宅建築のための農地転用、当事務所に相談してみませんか?
当然にことかもしれませんが、皆様が最終的に行いたい事業は住宅の建築で、農地転用の手続きはその入口に過ぎないのではないかと思います。しかし、この前段階でのつまずいてしまうと事業全体の進捗が遅れかねませんし、「計画を進めていたのに農地転用の許可が出なかった」ということも起こりかねません。
当事務所は、農地転用をはじめとする不動産関連の業務を専門に扱っている行政書士事務所ですので、様々な事例のノウハウが蓄積しています。また、対応する案件数を制限していますので、レスポンスが早く、処理もスピーディーです。
申請書類の作成や添付書類の収集に不安がある方、農地転用手続きを外注して、住宅建築に専念したいハウスメーカー様は、どうぞ当事務所にご相談ください。対面でのご相談はもちろん、Zoomなどのオンラインでのご相談も歓迎いたします。
住宅建築のため農地転用代行サービス
当事務所では、農地を転用して住宅を建てたい方のために、農地転用手続きの代行を承っております。サービスの内容、料金、対応エリアは次のとおりとさせていただきます。
サービスの内容
当事務所が提供しているサービスの内容は以下の範囲になります。建築図面の作成以外はすべて対応させていただいています。
1 | 事前相談(30分無料) ※面談またはオンラインでの対応になります。 |
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2 | 事前調査(現地調査を含む) |
3 | 農業委員会事務局との折衝 |
4 | 必要書類の収集 ※お客様が準備する必要がある書類については、あらかじめご説明、ご案内いたします。 |
5 | 申請書類の作成 ※建築図面の作成はお客様にお願いしています。 |
6 | 窓口での申請 |
7 | 許可証の受領 |
サービス料金
次に、よくあるケースに応じて必要となる手続きの内容と、その業務の目安の料金をご案内いたします。より正確な金額については、契約の前にお見積書を作成してご確認いただきますのでご安心ください。
ケース | サービス | 料金(税込) |
---|---|---|
必要に応じて | 調査料(コンサルタント料) | 30,000円~ |
市街化区域内での農地転用 | 農地法4条、5条届出 | 40,000円~ |
市街化区域以外区域での農地転用 | 農地法4条、5条許可申請 | 110,000円~ |
農用地区域内農地(青地)の場合に加算 | 農振農用地からの除外申出 | 160,000円~ |
土地改良区等の受益地となっている場合に加算 | 土地改良区からの脱退手続き | 40,000円~ |
一定面積以上での開発行為がある場合に加算 | 開発許可申請 | 別途見積もり |
交通費については、当事務所から半径40km以内の場合には原則無料で対応いたします。40kmを超える場合には、1kmあたり30円を目安として請求させていただきます。
その他にかかる費用としては、登記簿などの証明書類取得料(実費)があります。
サービス提供エリア
福島市、郡山市、伊達市、二本松市、本宮市、田村市、須賀川市、白河市を中心に、福島県内全域の農地について対応いたします。
福島市、郡山市、伊達市、二本松市、本宮市、須賀川市、田村市、国見町、桑折町、川俣町、大玉村、鏡石町、三春町の農地については、一部の地域を除き、交通費無料で対応させていただきます。
ご依頼の流れ
1. お問い合わせ
メールまたはお電話にてお問い合わせください。ご相談の日時について打ち合わせいたします。
2. ご相談
面談またはZoom(テレビ会議システム)にて、詳しくお話を伺います。
ご相談の際には、転用を希望する候補地の地番が分かるものをご準備ください。また、しっかりしたものでなくても構いませんが、事業の概要が分かるもの(図面など)の準備もお願いします。
3. 事前調査
お伺いした内容をもとに、公簿上の調査、現地確認、農業委員会への照会を行います。事前に調査料をいただいております。
4. お見積もり・契約
調査により正確な見積書が作成されましたら、合意のうえ契約書を取り交わします。原則として、着手金の入金をお願いしています。
5. 必要書類の収集・申請書類の作成
当事務所で取得できる書類については、すべて代理で取得いたします。
6. 納品・料金のお支払い
許可証が交付されるまでに、残金と費用を請求いたします。現金またはお振込み、クレジットカード決済にてご入金ください。許可証は代理受領いたします。
住宅建築のための農地転用をご予定の方へ
これまで解説してきましたように、住宅建築のための農地転用手続きは、農地の所在地が都市計画上のどの区域にあるかによってかなり違いがあります。まずは、その農地のある市町村に都市計画区域があるのかどうか、都市計画区域があるのであれば、線引きがあるのかどうかを確認してみるとよいでしょう。
線引きがある市町村である場合、市街化調整区域で建てられる建築物は限られており、一般住宅の新築は原則として許可されません、市街化区域などの他のエリアでの建築を考えるべきでしょう。
※ 住宅建築のための農地転用について詳しく知りたい方は、農地を宅地に転用して住宅を建てる手続きを行政書士が解説 をご一読ください。