【法改正情報】盛土規制法の規制内容と手続きについて解説

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2023年に施行された「宅地造成及び特定盛土等規制法(通称:盛土規制法)」に基づく規制区域の指定が、現在では全国の土地の大部分で実施されています。その結果、従来は何ら手続きが必要でなかった規模の切土や盛土などについても、事前の許可申請が必要になっています。

現在、福島県においては、県内のすべての土地が、「宅地造成等工事規制区域」または「特定盛土等規制区域」に指定されています。そのため、以下で解説する規模を超える切土や盛土、そして土砂の堆積をする際には、事前の許可・届出の手続きが求められています。

この記事では、盛土規制法が規制する工事の内容について明らかにし、宅地造成等工事規制区域での許可申請手続きについて解説しています。今後は、わずか30㎝の盛土をする場合にも事前の許可が必要となるケースが発生します。農地転用の手続きにも大きな影響が及ぶものと思われます。

盛土規制法の概要を解説

盛土規制法は、元々あった「宅地造成等規制法」を抜本的に見直し、法改正したもので、その背景には2021年に発生した静岡県熱海市における大規模な土石流災害の発生があります。危険な盛土等よる災害を防止し、国民の生活と財産を保護することがこの法律の目的です。

盛土規制法による規制の対象となる工事は、一定規模以上の土地の形質の変更(盛土・切土)と一時的な土砂の堆積です。例えば、次のような工事・行為がこれらに該当します。

  • 宅地を造成するための盛土・切土
  • 太陽光発電設備の設置のための盛土・切土
  • 残土処分場における盛土・切土
  • 土砂のストックヤードにおける仮置き

また、通常の営農行為を除き、農地における盛土・切土及び土砂の堆積、いわゆる「農地改良行為」に該当するものについても許可が必要となる場合もありますので注意が必要です。

宅地造成等工事規制区域と特定盛土等規制区域

ところで、盛土等の工事について規制がかかる区域は、下の図のように2つの区域に区分されています。「宅地造成工事等規制区域」と「特定盛土等規制区域」です。

ご覧いただけるように、市街地や集落に近いエリアは「宅地造成等工事規制区域」に指定されています。この地域で一定の規模以上の盛土・切土及び土砂の堆積を行う場合には、事前に都道府県知事の許可が必要となります。

以下では、宅地造成等工事規制区域で、規制の対象となる工事(行為)について詳しく解説しています。重要なポイントですのでしっかりと確認していきましょう。

※なお、特定盛土等規制区域での規制は、宅地造成等工事規制区域での規制より幾分緩くなっており、「許可」の対象となる規模の工事と「届出」の対象となる工事に区分されています。

盛土規制法で許可が必要となる工事について解説

それでは図を示しながら、宅地造成等工事規制区域にて許可の対象となる盛土等の規模について解説します。この図は、国土交通省・農林水産省・林野庁が事業者向けに作成したパンフレットより引用しています。

なお、ここでいう崖(がけ)とは、地表面が水平面に対し30度を超える角度をなす土地(硬い岩盤を除く)で、盛土や切土によって形成されたものになります。建築基準法やがけ条例で建築制限を受ける「崖」の概念とは異なるものであることには注意が必要です。

①盛土で高さが1mを超える崖を生ずるもの

② 切土で高さが2mを超える崖を生ずるもの

③ 盛土と切土を同時に行い、高さが2mを超える崖を生ずるもの

④ 盛土で高さが2mを超えるもの(崖を生じないもの)

⑤ 盛土または切土をする土地の面積が500㎡を超えるもの

以上①~⑤は、土地の形質の変更(盛土・切土)に対する規制です。宅地造成などの工事を行う場合で、上記に該当するときには事前に許可を受けることが必要となります。

注意すべきは盛土と切土の違いです。切土の場合、高さが2mを超えたとしても崖が生ずる(角度が30度を超える)ことがなければ、盛土規制法上の手続きは不要になります。一方、盛土の場合は崖が生じない場合であっても、2mを超える高さであれば許可申請が必要です。

もっとも、⑤が示すとおり、工事が行われる土地の面積が500㎡を超えてしまえば、盛土・切土の高さにかかわらず許可申請が必要です。なお、⑤のケースで許可が不要になる工事は盛土・切土の高さが30㎝までですので、かなり厳しい規制であることが分かります。

⑥ 最大時に堆積する高さが2mを超え、かつ面積が300㎡を超えるもの

 

⑦ 最大時に堆積する面積が500㎡を超えるもの

⑥と⑦は盛土規制法で規制の対象となる土砂の堆積を示しています。土砂の堆積についての許可期間は5年以内となっており、あくまでも一時的な許可であるとされています。なお、⑦については高さの表記がありませんが、⑤と同様30㎝以下であれば許可が不要になります。

また、対象となる面積の考え方ですが、土砂の堆積を行う土地全体の面積ではないことには注意が必要です。⑤のケースとは異なり、堆積する箇所に限定されていますのでお気をつけください。

許可を要しないされている工事とは

ここからは、盛土規制法上の許可が不要とされている工事等について、主なものを挙げて解説を加えます。

A) 開発許可を受けて実施される工事

都市計画法第29条の許可を受けて実施される工事については、盛土規制法に基づく許可があったとみなされます。開発許可の手続きでは、技術基準がこと細かく定められており、基準を満たさない工事には許可が下りません。開発許可の審査で代替できるということなのでしょう。

B) 工事の施行に付随して行われる土砂の堆積

工事の施行に付随して行われる土砂の堆積であって、工事に使用する土砂または工事で発生した土砂を工事の現場またはその付近に堆積するものについては、条件付きで許可が不要になります。一定の条件を満たすことで、災害が発生するおそれがない工事として認められることになります。

ただし、工事で発生した土石を現場とは別の仮置き場におくような場合には、許可等の手続きが必要になることがありますので注意が必要です。

C) 農地及び採草放牧地において行われる通常の営農行為

通常の農業生産活動やほ場整備のための耕起、代かき、整地、畝立、けい畔の新設・補修・除去、表土の補充であってその前後の地盤面の標高差が1mを超えないものについては許可が不要となります。なお、通常の営農行為の範囲に含まれるかどうかは、事前に農業委員会事務局などへ相談するものとされています。

盛土規制法の許可申請手続きの流れ

次に、許可申請等の手引(令和6年10月福島県作成)などをもとに、盛土規制法に基づく許可申請手続きの流れについて解説します。事業の計画から工事完了までは、次のような段階を経ることになります。許可申請にあたっては、事前に周辺住民に周知することが求められていることが重要です。

1. 許可申請前

盛土や切土を伴う工事や土砂の堆積を実施する際には、土地の所有者や使用者全員の同意を得た上で、周辺住民に対して工事内容などを周知することが求められます。福島県では、申請前に事前相談を行うよう要請しています。

周辺住民への周知の方法としては、ア)説明会の開催、イ)工事内容を記載した書面の配布、ウ)工事内容の掲示及びインターネットを利用した閲覧、の3つが例示されています。

2. 許可申請・許可

申請に必要な書類を揃え、許可担当部署に対して申請書を提出します。福島県の場合、福島市・郡山市・いわき市の3市は市長が許可権者、その他の市町村は福島県知事が許可権者となります。

申請が受け付けられると、各許可権者は次の許可基準に従って審査を行います。

  • 災害防止のための安全基準に適合すること
  • 工事主が必要な資力・信用を有すること
  •  工事施行者が必要な能力を有すること
  •  土地の所有者等全員の同意を得ていること

また、都道府県知事などが許可した場合には、工事主の氏名、盛土等が行われる土地の所在地などが公表されます。

3. 工事着手

許可を受けた工事主は、工事現場の見やすい場所に標識を掲げるとともに、工事着手届を提出します。また、工事着手後は、3か月ごとの定期検査や中間検査を受けることが必要です。なお、中間検査は、施行後では確認できない箇所について行う検査であり、盛土・切土の安全性に関わる重要な検査となります。

4. 工事完了

工事の完了後、その工事が許可の内容に適合していることを判定するため、宅地造成または特定盛土等に関する工事(①~⑤の工事)については完了検査、土砂の堆積に関する工事(⑥~⑦の工事)については確認申請に基づく確認を行います。

まとめ ~事前の確認をしっかりと~

開発行為を伴わない農地転用においては、今後は盛土規制法の手続きが必要になるかどうかの確認が重要になります。盛土・切土が発生する宅地造成では、あらかじめ土地の高さについての測量が必要になるケースも増えていくのではないかと思われます。

盛土規制法では、無許可行為や命令違反に対する刑罰が、最大で懲役3年以下・罰金1000万円以下という厳しい内容となっており、法人に対しても最大3億円以下の重科の規定がおかれています。事業者の皆様におかれましては、役所にしっかり確認しながら、慎重に事業を進めていただきたいと思います。

まだ始まったばかりの制度です。今後どのような運用がされていくのか、注視していきたいと考えています。

 

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