違反転用・無断転用が農業委員会のパトロールで発覚し、是正を求められたのをきっかけに、農地転用の許可申請のご依頼が入ることがあります。農地法では、農地を農地以外のものにする(転用する)こと、転用目的で農地の権利を移転・設定することに事前の許可を要求しています。そのため、まずは違反転用状態の解消を役所から命じられることになります。
許可なしの転用行為に対しては、原状回復命令や罰金などの重い処分がなされる場合があります。また、許可なしでの農地の権利移転は法律的に無効であり、売買契約を交わしても効力が生じず、所有権移転登記ができません。日本では土地は私有財産として認められているのに、どうしてこのような制限があるのでしょうか。
農地は、日本国民に対して安定して食料を供給するためになくてはならないものです。現在でも、多くの食料は外国からの輸入に頼ってはいますが、戦争や災害等で輸入がストップした場合を考慮すれば、一定の食料自給率を維持することは重要なことでしょう。農地の利用規制は、食料安全保障のために存在しているといえます。
一方、日本の農業をとり巻く現状は厳しく、担い手の高齢化や農産物の価格低迷により離農が進み、耕作放棄地が増加の一途をたどっています。現在、全国の耕作放棄地は40万㎡程あるとされ、この面積は埼玉県の面積に相当する大きさです。この広大な耕作放棄地については、農地の保全と開発のバランスを考慮して活用していくべきだと思います。
現在の農地転用許可制度は、多少の問題があるとしても、まさに農地の保全と開発のバランスを考えて設計されているものだといえます。ですので、転用を進めようとする事業者の皆様は、まずは法令に従って手続きを進めていくことが大切なことだと考えます。
農地転用の基本的なルールを確認
法令に従って手続きを進めると言われても、多くの事業者様にとっては法令の条文を読んだり、農林水産省からの通知を読んだりする機会は滅多にないでしょうし、そのような時間の余裕はないでしょう。本業にお忙しいのですから当たり前のことです。また、手続きの進め方以前に、農地転用の基本的なルールについても意外とご存じない方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、農地転用をお考えの皆様へ向けて、この制度の基本的なルールについて解説したいと思います。農地転用の許可申請は、ここで解説する内容を踏まえて、市町村の農業委員会事務局と相談しながら手続きを進めていくことになります。皆様の転用事業の成功のための参考になれば幸いです。
① 農地転用には目的がなければならないこと
農地転用とは農地を農地以外のものにする事実行為(現況を物理的に変更すること)を指しますが、これを行うには住宅を建てるなどの具体的な目的がなければなりません。農地は売買が制限されているため、後で売買をしやすくするために、とりあえず農地を造成して宅地にしておきたいと考える方もいらっしゃるでしょう。しかし、このような「資産保有目的」での転用は認められません。
② 許可が出されてらすぐに転用事業を行わなければならないこと
①と深く関係することになりますが、農地転用は申請が許可された後、遅滞なく転用事業が行われる見込みがなければ許可を受けられません。例えば、1年後に住宅を建てるための申請はできないという仕組みになっています。また、農地法の他の法律による許可が必要なものがあれば、その許可が受けられるという見込みが必要になります。
③ 転用事業が確実に行われなければならないこと
仮に農地転用が許可されたとしても、そこで実施する事業計画が頓挫してしまえば、その農地はただ潰されただけとなり、転用許可の意味は何もなくなってしまいます。ですので、農地転用の許可申請の際には、転用事業が確実に行われるかどうかが審査の対象となります。
例えば、住宅を建てるという事業であれば、その資金がきちんと確保されているという確認が、銀行の残高証明書などによって行われます。
④ 農地転用する面積は必要な分だけでなければならないこと
農地法は基本的には農地を保全しようという考え方に基づいていますので、農地転用制度は、必要な面積を超えた転用は許可されないような仕組みになっています。例えば一戸建ての住宅(一般住宅)の建築の場合は、500㎡以内と定められている自治体が多いです。ですので、場合によっては農地を測量・分筆したうえで農地転用の申請を行う必要があります。測量と分筆は土地家屋調査士の業務となります。
⑤ 農地転用は低いランクの農地から行わなければならないこと
ご存じの方が多いかとは思いますが、日本の農地は、農振農用地・甲種農地・第1種農地・第2種農地・第3種農地の5つに分類されています。そして、転用するのであれば、できるだけ農業生産性の低い農地(第3種農地や第2種農地)から転用するように求められています。
原則として、転用できる農地は第3種農地と第2種農地とされており、第2種農地は、第3種農地ではその転用事業ができないという理由づけが必要です。田んぼが一面に広がるような優良な農地のど真ん中を転用することはできないということになります。農地区分については、他の記事で詳しく解説しておりますのでご参照ください。
※ 農地区分とその判断方法については、農地転用における「農地区分」の判定方法について行政書士が解説 の記事で詳細に解説していますのでご覧ください。
⑥ 農地転用の際には周囲の農地に悪影響を及ぼしてはならないこと
農地転用の際に気をつけなければならないのは、転用後に周囲の農地に悪影響を与えないような配慮をしておかなければならないということです。農地転用の申請書には、「転用することによって生じる付近の土地・作物・家畜等の被害の防除施設の概要」として、以下の3点の記載が求められています。
- 土砂の流出等の災害を防止するための措置
- 農業用用排水施設の有する機能に支障を及ぼさないための措置
- 周辺の農地に係る営農条件(集団農地の蚕食又は分断、日照等)に支障を及ぼさないための措置
実務上最も重要なのが、雨水や汚水をどのように処理するかどうかです。土地をアスファルトなどで舗装すれば雨水が自然浸透しなくなりますし、住宅などの建物を建てれば人の生活で生じた汚水が発生します。これらの水をどのように処理し、排水するかを申請の際に図面や文面で説明する必要があります。
⑦ 農地転用の他にも必要な手続きがあるということ
農地を駐車場にしたり、住宅を建てたりするためには農地転用の許可を受けなければなりませんが、農地転用のみで完結する手続きはほとんどありません。まずは、先に解説したように、事前に測量・分筆が必要な場合があります。また、農地転用の許可を受けた後には、地目を変更しなくてはなりませんし、所有権移転登記が必要な場合もあります。
その他にも、申請する農地の位置や面積によっては、開発許可申請などの都市計画法上の手続きも必要な場合もありますし、転用する農地が農振農用地(青地)であれば、先に除外の申請をしておかなければなりません。また、土地改良区の受益地となっていれば、除外の手続きも必要になります。農地転用をお考えの皆様は、付随する手続きについても怠らないように気をつけなければなりません。事前にしっかりとした調査を行うことが重要です。
福島県内の農地転用のこと、当事務所に相談してみませんか?
農地転用にあたっての基本的なルールを解説してきましたが、ご理解いただけたでしょうか。しかしながら、農地転用の手続きをご自身で進めようとしても、なかなか難しいとか、時間がとれないという状況も多いのではないでしょうか。
当事務所では、福島県内の農地転用やその関連する手続きのサポート業務を承っております。ご依頼いただきますと、申請書類の作成や添付書類の収集という面倒で時間のかかる業務を省くことができ、それぞれの本業に集中することが可能になります。必要な手続きの見落としも防ぐことができますし、役所とのやりとりも一任することができます。農地転用の申請をお考えの方は、どうぞ当事務所にご相談ください。
サービス内容
当事務所が皆様に提供している農地転用の手続きのサービス内容は以下のとおりです。依頼者の権利利益が迅速に実現するように、しっかりと取り組ませていただきます。
1.事前相談 | 面談またはオンラインでの対応になります。初回の相談は30分無料で対応させていただきます。 |
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2.事前調査(現地調査を含む) | 公簿上の調査、現地調査、そして農業委員会事務局などの担当部署への確認をいたします。事前調査の費用として20,000~30,000円程度をいただくことがあります。 |
3.農業委員会事務局等との折衝 | 進捗状況に応じて、役所の担当部署と打ち合わせをいたします。 |
4.必要書類の収集・申請書類の作成 | 当事務所で代理で取得できるものについてはすべて対応します。ただし、建築図面についてはお客様に提供いただきます。 |
5.窓口での申請・補正 | 担当部署より補正を求められた際には、責任を持って誠実に対応いたします。 |
6.許可証の受領 | 農業委員会の現地確認の際の立ち合い、工事完了報告の提出にも対応可能です。 |
サービス料金
以下では、ケースに応じた目安となる料金をご案内します。なお、より正確な金額については、初回面談後または事前調査の後にお見積もりを作成し、提示いたしますのでご安心ください。
ケース | サービス | 料 金 |
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市街化区域内の農地 | 農地法4,5条届出 | 40,000円~ |
非線引き都市計画区域、市街化調整区域、無指定区域の農地 | 農地法4,5条許可申請 | 90,000円~ |
農用地区域内農地(農振農用地)の場合に加算 | 農振農用地除外申出 | 160,000円~ |
土地改良区の受益地となっている場合に加算 | 土地改良区除外申請 | 40,000円~(別途清算金あり) |
市街化調整区域で開発行為が行われる場合 | 開発許可申請(都市計画法29条申請) | 別途見積もり |
市街化調整区域内での建築物の建築で開発許可が不要の場合 | 建築許可申請(土地計画法43条申請) | 200,000円~ |
※交通費については、当事務所から半径40km以内の場合には原則無料で対応いたします。40kmを超える場合には、1kmあたり30円を目安に請求させていただきます。
※その他にかかる費用としては、登記簿などの証明書類取得料(実費)があります。
サービス提供エリア
福島市、郡山市、伊達市、二本松市、本宮市、田村市、須賀川市、白河市を中心に、福島県内全域の農地について対応いたします。
福島市、郡山市、伊達市、二本松市、本宮市、須賀川市、田村市、国見町、桑折町、川俣町、大玉村、鏡石町、三春町の農地については、一部の地域を除き、交通費無料で対応させていただきます。
農地転用をお考えの方へ、行政書士からのメッセージ
読者の皆様におかれましては、住宅の建築、太陽光パネルの設置、駐車場としての利用など、様々な目的の達成のために農地転用の手続きを進めようとされているのではないかと思います。農地転用の許可を受けることは、皆様にとって、事業のゴールではなくスタートです。私は、皆様が目的である事業を達成できるよう、スタート部分である農地転用手続きを迅速かつ正確に処理することを心掛けております。