福島市の農地を転用する手続きを行政書士が徹底解説

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福島市内の農地を転用する場合には、都市計画法上の区域区分によって手続きの難易度が異なります。市街化調整区域で農地転用を申請する場合には、同時に開発許可を受けなければならないことが多く、要件が厳しいものになります。これに対して、市街化区域内の農地の転用は、届出という簡易的な手続きで済ますことができます。

福島市の都市計画と農地転用手続きを確認

農地転用の手続きは、転用する農地が、都市計画法上のどの区域区分に位置しているかによって異なります。市街化区域内にある農地については「届出」という手続きになり、市街化区域以外の区域にある農地については「許可申請」という手続きになります。

福島市の場合、都市計画区域が定められており、その都市計画区域内で、市街化区域と市街化調整区域との線引きが行われています。つまり、都市計画法上、福島市の土地は、次のような区域に分類できることになります。

区域区分 性質 手続き
市街化区域 すでに市街化している区域、または概ね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域 届出
市街化調整区域 市街化を抑制すべき区域 許可申請
都市計画区域外 原則として都市計画法の規制を受けない区域 許可申請

福島市の都市計画区域を確認する方法

ところで、転用しようとする農地が都市計画法上のどの区域区分に位置しているかについては、どのように確認したらよいのでしょうか。福島市の都市計画を所管している部署は、都市計画課となっており、この窓口に問い合わせることで確認することができます。

福島市 都市政策部
都市計画課 都市計画係
福島市五老内町3番1号
福島市役所本庁舎6階
電話番号024-525-3761
FAX番号024-533-0026

福島市の都市計画課では、都市計画総括図と都市計画図(詳細図)が販売されており、総括図についてはHP上からダウンロードすることが可能です。また、福島市では、ふくしまeマップ(福島市地理情報システム)が公開されています。ふくしまeマップでは、都市計画情報、ハザードマップなどの地理情報を得ることができます。

ただし、総括図とeマップについては、概ねの位置区域を表示したものですので、実際に手続きを進めようとする際には、少なくとも都市計画図(詳細図)で確認することが必要です。都市計画図(詳細図)は郵送で購入することも可能です。

市街化区域内の農地を転用する手続き

農地転用とは、農地を農地以外のものにすることで、人の意思で農地を耕作目的に供さない状態にする行為のことをいいます。福島市の市街化区域内の農地を転用するためには、事前に農業委員会に対して届出を行わなければなりません。

市街化区域は、都市計画に基づいて市街化(宅地化)を進めていく区域です。そのため、農地転用についての許可を受けることが必要とされず、届出という簡略化された手続きで済ませることができます。

ただし、これは農地法上の許可が不要だということに過ぎませんので、他の法令・条例等で求められている手続きがないかどうかは別途確認する必要があります。例えば、転用する農地の面積が1,000㎡以上になる場合には、後で解説する開発許可の申請が必要です。

また、市街化区域内の農地であっても、事前の届出を怠れば違反転用(無断転用)となることにも注意が必要です。違反転用をしてしまいますと、以後の手続きに支障をきたすこともあります。定められた手続きをきちんと実施していくことは、とても重要です。

市街化調整区域内の農地を転用する手続き

一方、市街化調整区域は、市街化を抑えていく区域です。この区域では、原則として開発行為が禁止されており、基本的には建物を建てることができません。

開発行為とは、簡単にいえば「建築物の建築を目的とする土地の区画形質の変更」です。建物を建てるために農地を宅地にする行為は、土地の質の変更に該当するため、市街化調整区域内の農地を転用する際には、開発許可の申請が必要です。

農地法上の手続きについていえば、市街化調整区域内の農地転用手続きは、届出ではなく許可申請になります。つまり、市街化調整区域内で、建築物の建築が伴う農地転用を行う際には、農地転用の許可と開発許可の2つの許可申請が必要だということになります。

他方、開発行為を伴わない農地転用という手続きもあり得ます。駐車場や資材置き場、太陽光パネルの敷地にするための農地転用は、建築物の建築が行われないため、市街化調整区域内であっても、開発許可の手続きは不要になります。

都市計画区域外の農地を転用する手続き

福島市においては、すべてのエリアが都市計画区域に含まれているわけではないため、都市計画区域外の区域というエリアが存在します。下の図でいうと、一番上にあたるエリアです。

(千葉県のホームページより引用)

このエリアで農地を転用する場合も、届出ではなく許可申請になりますが、ほとんどの場合、開発許可の手続きが必要になることはないでしょう。なぜなら、このエリアで開発許可が必要になる面積は、10,000㎡以上であるからです。

福島市における農地転用手続きの流れを確認

福島市の農地は、都市計画法によって3つの区域に分類されること、そして、それぞれについて必要な手続きが変わることを解説してきました。ご理解いただけたでしょうか。ここからは、福島市における農地転用手続きの実際について、具体的に解説していきたいと思います。

福島市の農地転用の許可権者は農業委員会

福島市の農地転用の手続きの窓口は、農業委員会事務局となっています。農地法上、農地転用の許可権者は都道府県知事となっていますが、福島市の場合には、条例による権限の委譲を受けており、4ha以下の農地転用の許可は、農業委員会長が決裁することになっています。

そのため、農地転用の届出も許可申請も、事実上の審査をするのは、農業委員会事務局ということになります。相談先も書類提出先もこちらになります。

福島市
農業委員会事務局 農地課
福島市五老内町3番1号
福島市役所本庁舎3階
電話番号:024-525-3779
FAX番号: 024-533-2725

福島市での農地転用は事前相談が必要

福島県行政書士会が令和3年に実施したアンケートによれば、福島市の農業委員会では、農地転用の許可申請を行おうとする者に対し、事前の相談を必須としています。そして、現在もホームページ上で「必ず事前に相談すること」を求めています。

法的な根拠は別として、事前相談を行わずにいきなり申請書類を提出するのは現実的ではありません。必要な資料を持参して、転用が可能かどうかの協議をしておくことは、無駄な時間と労力を費やすのを避けるために必要なことだと考えます。

幸いなことに、福島市では、オンラインで事前に相談時間を予約できるシステムを導入しています。あらかじめ相談内容を伝えておくことができるので、スムーズに相談を進めることができます。(農地の権利移動や転用に関する窓口相談予約フォーム

農業委員会事務局に相談に行く際には、土地の登記事項証明書や公図などの農地の権利関係や所在が分かる資料を持参しましょう。転用の目的をまとめた簡易的な事業計画書を用意するとさらに良いと思います。

福島市の農地転用手続きの受付期間

福島市の農地転用手続きの受付日は、届出、許可申請それぞれについて、次のように定められています。受付の締切日に遅れてしまうと、次の受付期間まで待たなければなりません。特に許可申請では、1か月後の申請になってしまいますので注意が必要です。

市街化区域内の農地転用

手続き 受付日 受理証交付日
届出 随時受付(毎月10日、20日、月末締切) 締切日から4開庁日後

※転用面積が1,000㎡以上の場合には、事前に開発許可が必要な場合があります。

市街化区域以外の区域の農地転用

手続き 受付期間 許可証交付日
許可申請 毎月22日から28日 翌月の28日

※他法令との調整が必要な場合には、事前に関係機関との協議または手続の受理が終了してからの申請となります。また、許可日の調整が必要な場合は交付日が28日以降となる場合があります。

農地転用、地目変更登記までの流れ

ところで、農地転用の許可申請において、地目の変更の登記はどのようなタイミングでなされるのでしょうか。許可証が交付されればすぐに、地目を宅地に変えることが可能なのでしょうか。

地目の変更は、現況が宅地へと変わった段階でなければ行うことはできません。実務上は次のような流れで、建物が完成したとき(転用事業が完了したとき)に、表題登記と同時に行われるのが一般的です。

  1. 転用許可申請
  2. 許可証交付
  3. 所有権移転登記(農地の売買を伴う場合)
  4. 進捗状況報告
  5. 転用事業完了
  6. 地目変更登記

農地転用の許可は農地を宅地に変えるための許可ではなく、申請した事業内容のために利用するための許可です。従って、許可が下りたからといって、すぐに地目の変更ができるわけではないことをご理解いただきたいと思います。

福島市の農地転用手続きにおける必要書類を確認

ここからは、福島市の農地転用の手続きで必要とされている書類について解説していきます。福島市の場合、図面の書き方に細かい指示がありますので、その指示のとおりに作成することが重要になります。

市街化区域内での農地転用の場合

福島市の市街化区域内の農地を転用しようとする場合は、届出書の他に、以下の添付書類を提出することとされています。書類の提出は、転用事業に着手する前に、農業委員会事務局に対して行います。

書類の内容 関係窓口
土地登記全部事項証明書(筆ごとに原本を提出)
※登記簿の住所欄と届出書の住所が違う場合には住民票または戸籍の附票を添付
法務局
位置図(1/10000~1/50000の地図)
※方位を記入し、申請地を赤で着色する
農地法第18条第6項の通知書(小作地の場合)
※農地の賃貸借、使用貸借が合意解除されたことの通知書
農業委員会事務局
土地改良区の該当確認
※土地改良区の地区内に該当するか確認してから届出
福島市土地改良区
(水土里ネット福島市)

市街化区域以外の区域での農地転用の場合

福島市において、市街化区域以外の区域内の農地を転用しようとする場合は、申請書の他に、以下の添付書類を提出することになります。かなりのボリュームになりますので、漏れのないように気をつけましょう。

個人・法人共通で必要な書類

書類の内容 関係窓口
土地登記全部事項証明書
※所有者の氏名・住所が違う場合は確認できる書類(住民票や戸籍の附票など)を添付
※転用行為の妨げとなる権利を有する者がある場合は事前に抹消、できない場合は同意書などを添付
法務局
事業計画書(福島県様式第8-34号) 農業委員会
土地選定比較表・理由書
※農地以外や市街化区域内の土地も比較検討する
念書(駐車場、資材置き場の場合)
※申請地所在、地目、地積、建物建築しない旨の記載、申請者記名押印
公図の写し
※申請地は、現況地目・地積を記入し、赤枠で表示(併用地・既存敷地は青枠表示)
※隣接地は、現況地目・地番を記入
法務局
現況図(敷地拡張が必要な根拠を明確にする場合)
配置図(土地利用計画平面図)
※申請地赤枠、既存敷地青枠、縮尺、方位、作成者、作成年月日と以下の内容を記入
1接続道路の幅員
2道路のみなし後退線とその面積
3通路の幅員と延長
4建物又は施設物の敷地内での位置(面積)
5駐車場は規格と台数
6法面とその面積
7露天資材置き場は資材名称別に面積と色分け、通路・法面も色分け
8排水関係は青線記入
建築物の設計平面図・立面図(建築物がある場合)
※作成者・作成年月日・各階ごとの床面積、下屋面積、建築面積等を記入
地積測量図・求積図(地積測量している場合)
※作成者・作成年月日を記入
案内図
※住宅地図等の写し、方位、縮尺を記入
位置図(1/10000~1/50000の地図)
※方位、縮尺、申請地朱書、駐車場、資材置き場の場合は会社所在地を記入
水利権者の排水同意書
※道路側溝や河川法による河川への直接放流の場合は不要
各権利者
土地改良区の意見書(土地改良区の地区内にある場合) 各権利者
農地法第18条第6項の通知書(借地契約中の場合) 農業委員会
資金調達を証する書類として次のいずれか
・金融機関の残高証明書または融資証明書
・通帳(表紙、表紙裏面、最終残高の頁)の写し(名義人の奥書、作成年月日、押印、契印)
各金融機関

申請者が法人の場合に追加で必要なもの

書類の内容 関係窓口
履歴全部事項証明書または定款の写し
※代表者の奥書、作成年月日、押印、割印が必要
法務局
議事録の写し
※定款の目的に転用事業に関係するものがない場合に必要

他の法令により必要となる場合があるもの

書類の内容 関係窓口
開発行為許可申請書の写し 開発建築指導課
景観条例届出済み通知書等の写し 都市計画課
法定外公共物(里道、水路)の使用許可・廃止許可書の写し 農林整備課・管財課
道路法24条に基づく私費工事許可証の写し 路政課
農振を除外(変更)した場合には、通知書の写し 農業企画課

※ 添付書類についての詳細は、農地転用の手続きで必要な添付書類について行政書士が解説 の記事をご参照ください。

申請書類の押印省略と本人確認、福島市の対応

全国的な押印廃止の流れの中、福島市の農業委員会に提出する農地法関係の書類についても、押印の省略が認められることになりました。ただし、押印が省略された申請書等を提出する際には、本人確認のため、次の事項に留意しなければなりません。

  1. 個人の場合、申請者全員の本人確認書類の添付が必要(免許証の写しなど)
  2. 法人の場合、履歴全部事項証明書及び定款等の添付が必要
  3. 申請書等において補正事項があった場合、原則として書類の差替えによる対応が必要
  4. 代理申請において作成される委任状には、申請者の押印が必要

なお、従来通り、押印をした書類を提出することも可能です。

福島市の農地を転用したいとお考えの方へ、行政書士からひと言

福島市の都市計画区域においては、市街化区域と市街化調整区域とにはっきりと「線引き」がされています。市街化調整区域で開発行為を行おうとする場合には、面積にかかわらず、開発許可を受けなければならず、農地転用の難易度はかなり高くなります。確定測量が必要になるなど、時間と費用がかかります。

また、市街化調整区域の農地は、農振農用地(青地農地)や第1種農地である場合が多く、そもそも農地転用の立地基準を充たさないことがあります。そして、農地法や都市計画法以外にも、検討しなければならない法令はあります。

建物を建てるような事業を進めようとする際には、その土地にどのような利用規制がかかっているかを綿密に調査しておくべきでしょう。その土地が農地である場合、必要な手続きが農地転用にとどまらないケースが多いことには注意しなければなりません。

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