二本松市・本宮市の農地を転用する手続きを行政書士が徹底解説

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福島県の行政書士、佐藤勇太です。

今回の記事では、地元である二本松市・本宮市の農地転用の手続きについて、できるだけ詳しく、できるだけ分かりやすく解説しています。最後までお付き合いいただければ、きっと皆様の事業のお役に立てるのではないかと考えます。

二本松市・本宮市の都市計画と農地転用手続

二本松市・本宮市・大玉村の2市1村では、福島県によって、一体として都市計画区域の指定がされており、その名称を二本松本宮都市計画区域といいます。この区域では、「あだたらとあぶくまに育まれた歴史と風景を生かした交流都市」という理念のもとに、町づくりが進められています。

したがって、ここでは、一体として都市計画区域が指定されている二本松市と本宮市の双方の農地転用手続きについてについて解説しています。

二本松市・本宮市の農地転用はすべて許可申請

ところで、二本松本宮都市計画区域では、市街化区域と市街化調整区域との区域区分(線引き)が行われていません。一般的な呼び方でいえば、この都市計画区域は、「非線引き都市計画区域」ということになります。そして、この事実は、農地転用手続きに大きな影響を及ぼすことになります。

農地転用の手続きは、都市計画法上の区域区分によって、届出か許可申請かという違いが生じることになります。市街化区域内の農地の場合は届出となり、それ以外の区域内の農地の場合は許可申請となります。

二本松市・本宮市の農地を転用しようとする場合、この地域の都市計画区域には線引きがされておらず、市街化区域がありません。そのため、届出という簡易的な手続きで済ませることができる区域はありません。つまり、すべての農地転用について、許可申請が必要になるのがこの地域の特徴となります。

農地転用手続きと開発許可、非線引き都市計画区域の場合

都市計画法では、建築物を建てることを目的とする土地の区画形質の変更を開発行為と呼び、一定の面積以上の開発行為を行おうとする者に対して、事前の許可を受けることを義務づけています。そして、農地を宅地に変更する場合は、土地の「質」の変更に該当します。

二本松市・本宮市の農地は、非線引き都市計画区域と都市計画区域外の区域の2つの区域内のいずれかに位置することになり、開発許可が必要となる面積は以下のようになります。

区域 農地転用手続き 開発許可が必要な面積
非線引き都市計画区域 面積にかかわらず許可申請 3,000㎡以上
都市計画区域外の区域 面積にかかわらず許可申請 10,000㎡以上

(参考図:千葉県のHPより)

1,000㎡以上の開発等については指導要綱にも注意

二本松市・本宮市での農地転用の際に気をつけなければならないのが、都市計画法上の規制の他に、市独自の指導要綱の存在です。両市ともに、1,000㎡以上の開発行為等が行われる場合、行政指導として、開発許可申請に準じる手続きが求められています。

要綱に基づく手続きについては、個別具体的な相談・対応が必要と思われます。事前相談なしで農地転用の事業を進めてしまった場合、途中で事業の中止が求められる可能性がありますので注意が必要でしょう。なお、二本松市・本宮市における指導要綱の相談の窓口は次のようになっています。

要綱の名称 担当窓口 連絡先
二本松市宅地開発指導要綱 都市計画課 計画係(市役所本庁舎2階) 電話:0243-24-5321
本宮市開発事業指導要綱 政策推進課 政策推進係(市役所本庁2階) 電話:0243-55-5128

二本松市・本宮市での農地転用手続き、その特徴と流れ

二本松市・本宮市で農地転用を行う場合には、すべて許可申請の手続きが必要であること、開発許可による規制の他に、指導要綱に基づく規制があることについて解説してきました。ご理解いただけたでしょうか。ここからは、両市における農地転用手続きの実際について、具体的に解説していきたいと思います。

農地法4条申請と5条申請の違いを確認

ひと口に農地転用と呼んでいる手続きですが、法律的に説明すると、農地法4条に基づく許可申請と5条に基づく許可申請があります。ご存じのことかと思いますが、念のため確認しておきます。

4条申請は、一般に「自己転用」と呼ばれるもので、所有している農地や借りている農地を耕作以外の目的のために利用する際に必要になります。この場合、申請者は転用事業を行う土地所有者等(単独申請)です。

一方、5条申請は、農地を農地以外のものにする目的で売買したり、貸し借りをしたりする際の申請です。権利移転を伴う農地転用といってもよいでしょう。5条申請の場合の申請者は、譲受人と譲渡人、あるいは設定人と被設定人(共同申請)になります。

二本松市・本宮市の農地転用の許可権者は農業委員会

農地法上、農地転用の許可の権限は、都道府県知事にあるとされています。しかし、二本松市・本宮市の場合、福島県の条例によって権限の委譲がされており、4ha(40,000㎡)以下の農地転用の許可は、それぞれの市の農業委員会が決裁します。

そのため、農地転用の許可申請について、事務を所管するのは、農業委員会事務局ということになります。二本松市・本宮市の農地転用に関する相談先、書類の提出先は次のとおりです。

二本松市 農業委員会事務局 農地係
二本松市金色403番地1(本庁舎2階)
電話:0243-55-5081
FAX:0243-22-7023
本宮市 農業委員会事務局 農地係
本宮市本宮字万世212番地(本庁1階)
電話:0243-24-5387
FAX:0243-34-3138

農地転用許可申請の受付日・許可指令書の交付日

農地転用の許可は、月1回の農業委員会の会議によって決裁がなされます。そのため、その会議にかける案件を確定させるため、締切日が設定されています。二本松市・本宮市の許可申請の締切日、許可指令書(許可証)の交付日は、以下のとおりです。

受付締切日 許可証交付日
二本松市 前月25日(25日が閉庁日の場合は翌開庁日) 会議日から3開庁日後
本宮市 当月1日(1日が閉庁日の場合は翌開庁日) 当月25日

締切日を過ぎてしまいますと、翌月までの1か月間、手続きがストップしてしまいますので、余裕を持って書類の準備をしておくことが大切です。

申請前の事前協議の必要性

福島県行政書士会が令和3年に実施したアンケートに対して、二本松市・本宮市の農業委員会事務局は、事前協議(事前相談)の必要性について、次のような回答をしています。

二本松市 義務づけはしていない。相談なしの書類提出を受け付けないわけではないが、事前協議は原則必要。
本宮市 必ず必要

事前協議は、法律上の義務ではありませんが、これをしないで手続きを進めようとすると、申請者も役所も無駄な時間と労力を費やす結果になる場合が多いものと思われます。転用事業の開始が遅れないよう、事前に窓口に相談すべきでしょう。

二本松市・本宮市の農地転用許可申請、その必要書類

ここからは、二本松市・本宮市の農地転用の許可申請で必要とされている書類について解説していきます。まずは、法令上の規定についての確認です。農地法施行規則第30条によれば、農地転用許可申請に必要な添付書類は、以下のとおりとされています。

1号 申請者が法人である場合には、定款若しくは寄附行為の写し又は法人の登記事項証明書
2号 土地の位置を示す地図及び土地の登記事項証明書
3号 申請に係る土地に設置しようとする建物その他の施設及びこれらの施設を利用するために必要な道路、用排水施設その他の施設の位置を明らかにした図面
4号 次条第5号の資金計画に基づいて事業を実施するために必要な資力及び信用があることを証する書面
5号 申請に係る農地を転用する行為の妨げとなる権利を有する者がある場合には、その同意があつたことを証する書面
6号 申請に係る農地が土地改良区の地区内にある場合には、当該土地改良区の意見書
7号 その他参考となるべき書類

役所のホームページなどでは、その市町村独自の必要書類が掲載されていますが、原則となるものは上記1号~6号の書類で、その他参考となるべき書類(7号)に多少の違いがあることになります。

二本松市・本宮市で共通して必要な書類

次に、二本松市と本宮市の両市に共通して必要な書類・図面は以下のとおりになります。これらの書類は、どんなケースにおいても必須とされる添付書類です。

書類 内容 規則(号)
申請地の登記事項証明書 法務局で発行されるもので、直近3か月以内のもの 第2号
位置図 申請地の位置を示す地図で、5万分の1程度の縮尺のもの 第2号
案内図 住宅地図など、農業委員の現地視察の際に参考となるもの 第2号
現況図 申請地の現況を表す図面 第7号
公図の写し 二本松市では、申請地の地目、地積、所有者および隣接する土地の地目を付記 第7号
土地利用計画図 事業計画のレイアウトが分かる平面図など 第3号
資金証明書 転用事業を実施するための資金調達の見込みがあることを証する書面 第4号
事業計画書 福島県様式第8-34号で作成 第7号

以下は、農業委員会事務局において必要とされた場合に添付する書類となります。事前協議の段階で、何が必要で何が不要かをしっかりと確認しておくことが重要です。

ケース 書類(内容) 規則(号)
建物を建築する場合 建物平面図(立面図) 第3号
土地改良区の受益地となっている場合 意見書等(意見交付請求書・除外申請書) 第6号
雨水等が用水路に流入する場合 水利組合等の排水承諾書 第3号
公共水路に排水する場合 水路占有許可証の写し 第7号
登記事項証明書に記載されている土地所有者の住所と現在の住所が異なる場合 土地所有者の住民票または戸籍の附票 第2号
転用事業者が法人の場合 法人の登記事項証明書・定款の写し(二本松市では奥書証明が必要) 第1号
法人において、定款の目的にない事業計画の場合 議事録の写し 第1号
転用する行為の妨げとなる権利を有する者がある場合 金融機関の同意書等、権利の設定者の同意を証明するもの 第5号
第2種農地等を転用する場合 土地選定理由書 第7号
行政書士等が行う代理申請の場合 委任状 第7号
その他農業委員会が必要と認めるもの 第7号

他法令の許認可が必要となる場合に必要な書類

農地転用の許可申請では、農地法以外の法令による許可が必要な場合、同時に手続きを進めなければなりません。そのため、農地転用許可申請の添付書類に、他法令の許可申請が受理されたことを示すものが必要になります。具体的には、以下のようなものが考えられます。

ケース 書類
農用地区域内にある農地を転用する場合 農用地区域からの除外あるいは用途区分の変更が決定されたことがわかる書面
都市計画法に基づく開発許可が必要な転用行為の場合 都市計画法に基づく開発許可申請書の写し
採石法による岩石採取を目的とした転用行為の場合 県へ提出した採石計画の許可申請の写し
砂利採取法による砂利採取を目的とした転用行為の場合 県へ提出した砂利採取計画の許可申請の写し
森林法(林地開発許可制度等)による林地開発を目的とした転用行為の場合 開発区域が1haを超える場合:林地開発許可申請書の写し
開発区域が1ha未満の場合:市町村長が発行する伐採および伐採後の造林の届出書受理通知書の写し
太陽光発電設備の設置を目的とした転用行為(固定価格買取制度適用)の場合 再生可能エネルギー発電設備低圧系統連系・電力売電申込書の写し
系統連系に係る契約のご案内の写し
再生可能エネルギー発電事業計画の認定について(通知)の写し

二本松市では埋蔵文化財の有無に関する証明書が必要

ところで、二本松市においては、古代から近世にわたる遺跡や城郭跡などの文化財が多数存在しています。そのため、農地転用の許可申請の添付書類として、埋蔵文化財の有無に関する証明書が必要とされています。この証明書は、教育委員会文化課(本庁舎3階)で請求することになります。

二本松市・本宮市における土地改良区の手続き

農地転用許可申請の必要書類の1つに、土地改良区の意見書等の書類があります。これは、先に解説した農地法施行規則第30条の第6号に規定されている書類ですが、具体的にはどのような書類を指すのでしょうか。また、その手続きはどのように行えばよいのでしょうか。

土地改良区での手続きとは

土地改良区とは、農業生産を行う上で欠かせないさまざまな土地改良施設(用水路・ため池など)の整備・管理や、農地の整備などを目的として設立された農業者の組織です。土地改良区の区域内にある農地は、土地改良事業などにより、何らかの利益を受けている(受益地となっている)ことになります。

農地を転用した場合、その土地は土地改良区からの利益を受けることがなくなります。そこで、農地転用に先立って受益地から外してもらう手続きが発生することになります。一般的には、役員の方から「支障がない」というような意見書をいただくことになります。

二本松市と本宮市の土地改良区

令和5年4月1日現在、二本松市と本宮市には次の6つの土地改良区があります。(市町村の境界と土地改良区の境界は一致しない場合もあります)

二本松市 二本松市土地改良区、安達土地改良区、岩代町土地改良区、東和町土地改良区
本宮市 高木用水土地改良区、安達疎水土地改良区

二本松市においては、「農地転用等の通知及び意見書の交付請求書」を農地が所在する土地改良区に直接提出すること、安達土地改良区については「除外申請書」を提出することが求められています。フォーマットについては、二本松市役所のホームページからダウンロードすることができます。

申請する農地がどの土地改良区の受益地となっているか、あるいはどこにも関係していないかについては、役所も正確に把握しているわけではありません。ただし、該当しそうな土地改良区とその連絡先を教えてくれますので、それをもとにそれぞれの土地改良区に確認することになります。

なお、本宮市の安達疎水土地改良区については独立した事務所があります。所在と連絡先は次のとおりです。

安達疎水土地改良区 本宮市糠沢字石神109番1 電話:0243-44-2208

二本松市・本宮市で農地転用をお考えの方へ、行政書士からひと言

二本松市・本宮市の都市計画区域には、市街化区域の指定がないため、すべての農地転用手続きにおいて許可申請が必要です。また、1,000㎡を超える農地転用を行う場合には、市独自の指導要綱による手続きが必要になる場合があります。現在、二本松市においては、農振除外の申出の受付が休止されており、青地農地の転用はできません。

この地域の農地を転用しようとお考えの方は、まずは以上のポイントを抑えたうえで、申請農地が転用可能かどうかを役所に確認するとよいでしょう。また、ご自身での対応が難しいとお考えの方は、地元の行政書士事務所である当事務所までご相談いただければ幸いです。

 

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