【相談事例】農用地区域内農地(青地農地)の非農地証明は可能ですか?

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相談者:農用地区域内農地に別荘を建てたい方

私たち夫婦は山歩きをするのが好きで、週末になると各地の里山を訪れていましが、福島県内のある眺めの良い高台の土地を気に入ってしまい、そこに別荘を建てたいと考えるようになりました。

土地の所有者と売買の合意を得ましたが、ほぼ山林化しているその土地は、農用地区域内の農地ということでした。私たちは農業者ではないので農地を買うことができません。そこで、非農地証明を出してもらったあとに、所有者と売買契約を締結しようと考えました。

このようなやり方で農地を購入し、そこに建物を建てることはできるのでしょうか。

回答:行政書士

現況確認証明申請により、その土地に非農地証明が出された場合には、農地法が適用されなくなるため、農地法3条の許可がなくても土地を購入することができますし、農地転用の申請も不要になります。

しかし、その土地が農用地区域内にあることには変わりがありませんので、農振法(農業振興地域の整備に関する法律)上の規制は続くことになります。具体的にいえば、農振除外が認められるか、農振法第15条の2に基づく開発許可を受けなければ、開発行為をすることはできず、建物を建てることはできません。

福島県においては、農用地区域内農地であっても、非農地証明の申請が認められ、証明書の発行を受けることが可能です。ただし、その土地が農地以外の地目に変更されたとしても、農振除外の手続きをしなければ、開発行為ができない(建物を建てることができない)という運用がなされています。

農用地区域内農地にはどのような利用規制がかかっているのか

農用地区域(青地)とは、市町村が、農業振興地域整備計画において、おおむね10年以上にわたり農業上の利用を確保すべき土地として指定した土地で、農用地区域内の土地は、主に①農地、②採草放牧地、③混牧林地、④農業用施設用地のいずれかに用途区分されます。

農用地区域は、長期にわたり農業上の利用を確保する土地であり、農業公共投資は農用地区域に集中して行われることになっています。そのため、農用地区域での農地転用は、ごく一部の例外を除き許可されません。

ただし、農業振興地域整備計画は、農用地区域からの除外などを希望する申請者の申出によって、計画の変更がなされることがあります。農用地区域内の農地(青地農地)を農用地区域内以外の農地(白地農地)へと変更する手続きを、農振除外と呼びます。

農振除外の申出が認められるための要件を確認

農振除外が認められ、農地転用ができるようにするためには、農振法第13条第2項に規定されている6つの要件をすべて満たす必要があります。

  1. 農地以外にすることが必要・適当であって、農用地区域以外の土地では代えることができないこと
  2. 当該変更により、農用地区域内における農業経営基盤強化促進法19条1項に規定する地域計画の達成に支障を及ぼすおそれがないと認められること
  3. 農地の集団化、農作業の効率化、その周辺の土地の農業上の効率的かつ総合的な利用に支障がないこと
  4. 周辺の農業者の農地の集積に支障がないこと
  5. 農地等の保全や利用に必要な施設の機能に支障がないこと
  6. 土地改良事業などで、農業用の用排水路の新設・変更、区画整理、農地の造成を行った翌年から8年以上が経過しているこ

農振除外のスケジュールを確認

農振除外の手続きは受付の回数も少なく、申出から結果の通知までに半年以上かかります。いったいどうしてこんなに時間がかかるのでしょうか。以下は、福島県本宮市での農振除外にかかわるスケジュールとなります。(本宮市配布の資料より)

日程(1月受付締め切りの場合) 内 容 流 れ 備 考
11月初旬まで 農振除外相談(事前確認1) 申請者 → 市 位置図・簡易書類等必要書類を提出いただき、農振除外の可能性を確認していく。
11月後半 申請者へ「事前確認1」の結果 及び必要書類の提出を連絡 市 → 申請者 除外可能性がある案件について、「事前確認2」の必要書類を準備いただく。
12月初旬 事前確認 2 申請者 → 市 土地選定理由書・利用計画図等により、農振除外の可能性を確認する。
12月中旬 申請者へ「事前確認2」の結果 及び申請書提出を連絡 市 → 申請者 除外可能性がある案件について、申請者へ正式な書類を準備いただく。
1月初旬~1月末 農用地利用計画変更申出書(除外)受付 申請者 → 市 事業計画書等、正式な書類を提出いただく。※ 書類内容を前もって確認し、審査に備える。再提出依頼の可能性もあり得る。
2月 市協議会審査・意見書とりまとめ
3月 県への事前協議・県同意 市 → 県、 県 → 市
3月末~4月末 公告~異議申出受付終了
4月末~5月上旬 県への本協議・県同意 市 → 県、 県 → 市
5月中旬 申請者へ通知 市 → 申請者

資料を見ると、申請の準備から結果の通知まで、半年以上かかることが分かります。また、農振除外が認められるためには福島県との協議と同意が必要なこと、公告という手続きが必要なであることも読みとることができます。公告とは、自治体が掲示などの方法で一般公衆に告知することで、利害関係者は、除外の申出に対して異議申し立てをすることができます。

県の同意が得られない場合、あるいは周辺の農地所有者などからの異議申し立てがある場合も想定されるため、除外を認めてもいいのか、市としても、事前確認の段階で慎重に検討しなければなりません。農振除外という手続きは、「重い手続き」であることがご理解いただけたでしょうか。

農用地区域内農地の農地転用手続きの基本形とは

さて、農地に建物を建てるためには、所有者と共同で農地転用(農地法5条)の申請を行い、許可を受けることが通常の方法です。そして、その農地が農用地区域内農地である場合には、事前に農振除外を認めてもらう必要があります。

ただし、先に述べたように農振除外の要件を満たすのは難しい場合も多く、何よりも手続きに時間がかかります。しかし、農用地区域内農地であっても、除外をした場合に第2種農地に該当すれば、一般住宅の建築が可能となる場合もあります。

しかしながら、その土地が都市計画法に基づいて市街化調整区域に指定されている区域にある場合には話が変わってきます。市街化調整区域においては、開発許可を受けなければ建物を建てられることができず、建てられる建物の種類も限られています。

住宅に限れば、市街化調整区域に建てられるのは、農家住宅や分家住宅に限定されており、原則として、新規に一般住宅を建築するための許可が出ることはありません。

都市計画法によって、都市計画区域が市街化区域と市街化調整区域とに線引きされている市町村においては、農地法・農振法による利用規制の他に、都市計画法による規制があることも念頭に置いておかなければなりません。

農用地区域内の農地に対する非農地証明について

ところで、ご相談者のケースでは、登記簿上の地目は農地(田や畑)ですが、現況は農地に復元することが著しく困難な程度まで樹木が茂っています。福島県においては、申請地が次の要件に該当する場合には、原則として現況確認証明(非農地証明)の対象となるとされています。

  1. その土地が森林の様相を呈しているなど、農地に復元するための物理的な条件整備が著しく困難な土地
  2. 上記以外の場合であって、その土地の周囲の状況からみて、その土地を農地として復元しても継続して利用することができないと見込まれる土地

非農地証明は、法令に根拠がある手続きではなく、一種の行政サービスとして行われていることから、その要件や運用については自治体によってかなりのバラツキがあります。そして、今回の相談事例についても、都道府県や市町村によって異なる運用がなされています。

当事務所が直接確認したところによると、福島県の主要な市では、農用地区域内の農地であっても非農地証明の申請をすることは可能であり、現況が農地でなければ非農地証明がなされるという運用がされています。実際に、農用地区域内の農地を現況確認証明申請によって、地目を変更したこともあります。

非農地証明がなされた農地は、農地法による利用規制の対象から外れるため、農地法3条の許可なく売買ができるようになり、農地4条・5条の許可なく転用ができるようになります。

しかし、農地ではなくなったとはいえ、その土地は農用地区域内にあることには変わりはありませんので、農振法上の規制は続くことになります。農用地区域には、市町村によって農用利用計画が定められており、地目が農地でなくなったとしても、その計画に拘束されることになります。

また、農振法第15条の2では、農業地区域内での開発行為について、都道府県知事等の許可が必要とされています。そして、次のいずれかに該当するときには、許可をしてはならないと規定しています。

  1. 当該開発行為により当該開発行為に係る土地を農用地等として利用することが困難となるため、農業振興地域整備計画の達成に支障を及ぼすおそれがあること。
  2. 当該開発行為により当該開発行為に係る土地の周辺の農用地等において土砂の流出又は崩壊その他の耕作又は養畜の業務に著しい支障を及ぼす災害を発生させるおそれがあること
  3. 当該開発行為により当該開発行為に係る土地の周辺の農用地等に係る農業用用排水施設の有する機能に著しい支障を及ぼすおそれがあること

以上のような理由から、農用地区域内の農地において非農地証明が出されたとしても、農振除外の手続きを経なければ、一般住宅は建築できないと考えるべきでしょう。役所においても、実際にこのような行政指導が行われています。

非農地判定がされた土地の農用地区域からの除外について

農用地区域内の農地に建物を建築する方法としては、農振除外を経て農地転用をする方法と、非農地証明をとって土地を購入し、農振除外をする方法の2つが考えられます。どちらの方法をとったらよいのかはケースバイケースだとしか言えませんが、後者には3つのメリットがあります。

第1に、農地転用の許可申請が不要になること、第2に、土地を購入してからすぐに建物を建てる必要がないこと、弟3に、非農地判断がされた土地の農振除外は簡易的な方法で行われることです。

農林水産省のガイドラインによると、10ha以上の農用地でない場合や、土地改良事業等の施行にかかわる農用地に該当しない場合は、基礎調査を行わなくても農用地区域からの除外が可能だとされています。農振除外の判断が早まる可能性があります。

農地の現況から見て、非農地証明という手続きが使えそうなのであれば、農地転用手続きに替えるのも1つの方法かもしれません。いずれにせよ、農業委員会の事務局や行政書士などの専門家と十分に相談されることをお勧めいたします。

※ 非農地証明についての解説は、非農地証明(現況確認証明)の要件と手続きについて行政書士が解説 の記事も併せてご参照ください。

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