農地を転用して宅地分譲・建築条件付売買を行うための手続きを行政書士が解説

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福島県の行政書士、佐藤勇太です。

不動産業者などが住宅を購入する消費者のために行う農地転用手続きには、「建売分譲」と「宅地分譲」という形があり、原則として「宅地分譲」の形式での農地転用は許可されない仕組みになっています。農地転用許可の基準の中に、土地の造成のみを目的とするものは認めないという規定があるからです。

具体的な建築の予定がないのにもかかわらず農地を転用してしまった場合、その土地に住宅が建てられなければ、貴重な農地を失くしてしまっただけという結果に終わります。また、将来土地を売却することを前提とする、資産保有目的での農地転用を認めてしまうと、あっという間に農地がなくなってしまう可能性があります。

しかし、例外として「宅地分譲(更地分譲)」の形での転用が認められる特例措置があり、また、2019年の農林水産省の通知により、「建築条件付売買予定地」にするための農地転用が、一定の要件を満たすことによって、土地の造成のみを目的とするものに該当しないとみなされ、許可を受けられるようになりました。

この記事では、一般住宅を建てるための農地転用の手続きにおける、「建売分譲」、「宅地分譲(更地分譲)」、「建築条件付売買予定地」としての分譲の3つの形態とその許可要件について解説したいと思います。既にご存じの方もいらっしゃると思いますが、最後までお読みいただければ幸いです。

建売分譲での住宅販売と農地転用手続き

建売分譲とは、転用事業者であるハウスメーカー等が、自己の企画と責任において土地の造成と住宅建築を一体的に行い、かつ、その土地と住宅を一体として販売する形式となります。この場合の農地転用は、土地所有者とハウスメーカー等との共同申請で行う農地法5条申請となり、ハウスメーカー等は建物の建築が完了するまでの責任を負います。

そのため、農地転用許可申請にあたっては、申請書類に建築図面を添付することが必要であり、またその建築行為が確実に行われることの証明として、金融機関の残高証明などの資金証明書も必要となります。この形式が農地転用許可制度の原則といえるでしょう。

しかしながら、建物を建てるハウスメーカー等にとっては、建物を建てたけれど売れ残ってしまうというリスクがあり、また宅地分譲(更地分譲)の形式で行う方が費用を抑えることができます。そのため、宅地分譲の形式での土地(宅地)の販売にメリットを感じることもあるようです。

また、住宅を求める消費者にとっては、既成の住宅を購入するのではなく、自分たちの趣向に沿ったオーダーメイドの住宅を建てたいというニーズもあります。農地転用の許可を得て造成が終わった宅地のみの購入であれば、その希望を叶えることが可能になります。

宅地分譲(更地分譲)での宅地販売と農地転用手続き

宅地分譲(更地分譲)とは、不動産業者などが農地の転用と土地の造成を行い、その宅地(更地)を消費者に販売する形式をいいます。この形式の農地転用手続きは、土地所有者と不動産業者などとの間で行う5条申請になりますが、不動産業者などは建物建築までの責任を負うことがありません。資金証明についても、土地の造成までの金額で済むことになります。

ただし、この形式は農地を保全することを目的とする農地法の趣旨に反することになる可能性があります。転用を許可したのに建物が建てられなければ、その農地は遊休化してしまい、耕作ができなくなってしまうからです。そのため、宅地分譲(更地分譲)を目的とする農地転用の許可は、あくまでも例外的措置として位置づけられています。

農地転用許可制度では、その一般基準において、「申請に係る事業が工場、住宅その他の施設の用に供される土地の造成のみを目的とするものである場合」には許可がされないとされています。その例外として、宅地分譲(更地分譲)を目的とする宅地造成として許可され得るものは、農地法施行規則第47条第5号に列挙されているものに限定されます。

この例外的措置の1つとして挙げられるものが、「用途地域が定められている土地の区域内において、工場、住宅その他の施設の用に供される土地を造成するための転用で、その農地がこれらの用に供されることが確実と認められる場合」です。

「用途地域」とは、都市計画法第8条第1項に規定されている土地の区域区分のことで、その土地がどの区域に位置しているかによって、建築できる建物の規模や用途などが細かく定められています。

この用途地域の中で、確実に住宅が建てられることが分かる場合に限り、そして、農業上の土地利用との調整が整った場合に限り、宅地分譲(更地分譲)の形式での農地転用が許可される可能性があります。なお、この例外的措置は、非線引き都市計画区域内の農地転用の際に適用されることになります。

「建築条件付売買予定地」としての宅地販売と農地転用手続き

不動産業者などが、宅地を造成して売買するにあたって、自己または自己が指定する建設業者と消費者の間で、一定期間内に建築請負契約が成立することを条件とすることを建築条件付売買といいます。この建築条件付での宅地の売買は、消費者にとって、次のようなメリットがあります。

  • 消費者が選択できる建築業者(ハウスメーカー等)の幅が広がり、希望する住宅の設計が可能になる。
  • 建物が完成していない時点での土地の引渡し・地目の変更が可能になり、土地を担保としやすくなる。

このような消費者のニーズの高まりを踏まえ、一定の要件を満たした場合において、「建築条件付売買予定地」への農地転用は、宅地の造成のみを目的とする農地転用とはみなされず、許可を受けられるようになりました。なお、この形式での宅地の分譲は、用途地域以外の区域でも可能になります。

「建築条件付売買予定地」目的の農地転用が認められるための要件

農地を建築条件付の宅地に用途変更するための農地転用が許可されるためには、次の要件をすべて満たすことが必要になります。

  1. 転用事業者(不動産業者など)と消費者が建築条件付土地売買契約を締結し、契約後一定期間内(概ね3か月以内)に転用事業者または転用事業者が指定する建設業者と消費者が建築請負契約を締結すること約束していること

※転用事業者とは、農地転用の許可申請をする当事者のことで、土地の造成をして販売する不動産業者などのことをいいます。

  1. 1.の一定期間内に建築請負契約を締結しなかった場合には、その土地の売買契約が解除されることを当事者間の契約書に規定していること
  1. 転用事業者は、転用をしたすべての区画の土地を販売することができなかった場合、販売できなかった土地に自ら住宅を建てること
  1. 許可に係る工事(住宅の建設工事を含む)が完了するまでの間、許可の日から3か月後及び1年ごとに工事の進捗状況を報告するとともに、工事が完了したときは遅滞なくその旨を報告すること
  1. 転用事業者から消費者への土地の引渡しは、住宅が建築されたことが確認できた後または土地の造成後に建築確認が行われた後に行うこと

※建築確認が行われれば、建物の建築前でも土地の決済(売買代金の支払いと所有権移転登記)が可能となるため、地目を変更して土地を担保とすることが可能になります。

「建築条件付売買予定地」を目的とする農地転用の注意点

建築条件付であれば、宅地分譲に近い形での農地転用が認められることになりましたが、売れ残った土地には自分で住宅を建てなければなりません。農地転用は最小限度でなければならないという農地法の原則は、堅持されているといえるでしょう。また、資金証明についても、売れ残った土地に自分で建てる住宅の建設費まで確認されることになります。

「建築条件付売買予定地」を目的とする農地転用については、事業の選択肢が広がった分、必要な書類も増えますし、農地転用の手続きは難しくなっています。ご自身で申請を行う際には、役所に確認をしながら、慎重に手続きを進めていくことをお勧めします。

※ 住宅の建築を目的とする農地転用、ご相談をご希望の方は、【業務案内】農地を転用して住宅を建てたいとお考えの方へ をご覧ください。

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